国交省からの報告事項、全タク連からの支援要望や事例紹介などを経て、出席議員らによる意見交換に入った。口火を切ったのは党重鎮の細田博之氏（議連顧問）から。発言要旨はほぼ次の通りだ。

「民」がもっと責任を
細田（島根）　旅館、ホテル、鉄道会社みんな赤字で大変。コロナ新規感染者もピークから減少しはじめて、「やれやれ」と言っているが、いまの考え方というのは、全部政府の責任になっている。われわれ国会議員も含めて、増えたのも減ったのも、全部政府の責任あるいはお医者さんの責任だということになっている。
　実際考えてみると、すべての国民、１億2800万人が動いて、「ああ自由になった。飲みに行こう」「旅行しよう」といって出かけていく。その中でわずか０．何パーセントの方が陽性で、感染してまた爆発する。緊急事態宣言が解除されれば、また感染者が増える可能性が高い。そこで私は官ばかりが責任を負うのではなく、民がもっと責任を負う体制をとらなければダメだというのが持論だ。
４日ほど前になりますが、代々木体育館で何が行われたかというと、ボクシングの「レジェンド」という大会が行われた。観客2548人全員にＰＣＲ検査をさせた。その結果で陰性の人しか入場させていない。大会関係者は4160人いたが、全員２日前からＰＣＲ検査をして、全員の陰性を確認して参加した。
　それだけの準備をしてみんながボクシングの大会を楽しんだ。そういうことをやらないと、これからもおんなじことになる。
　これから西村康稔・コロナ担当相に会って話しますが、ＰＣＲ検査や抗原検査でも構わないが、民間の人が、例えば飛行機に乗る時には検査で陰性を確認してから乗ってください。そうすれば北海道でも沖縄でも感染者が増えるってことはない。われわれの地元、島根県だって温泉があり、出雲大社や観光地がたくさんあるのに、閑古鳥が鳴いている。タクシーもハイヤーもそうだ。
　それなら民間で検査を実施して、そこへ補助もしてやればいい。こういうことを民間がやれば、これから感染を抑えられた時も、抑えられなかった時も国民の皆さんが「政府のせいだ」「菅（義偉）総理のせいだ」と責任を押し付けて他人のせいにするということもできない。国民全体のせいなのに、そういうふうな状況は克服しなければならない。

全乗務員検査で「陰性マーク」も
　そのためには、「官」主導ではなく「民」主導で。ハイヤー・タクシーでも検査をしている会社はたくさんあると思うが、「全員検査している」として、陰性マークを付けたって良い。１週間しか持たないなら、検査を頻繁にやっても良いじゃないかということ。航空会社にはそんなことも言っている。旅館やホテルにもそう言っている。
　官と民が協力するということがないと、これから感染者数が増えたり減ったりする時に国民の皆さんが菅さんのせいにしたり、田村（憲久・厚労相）さんや西村さんのせいにするだけだ。あるいは尾身（茂・政府コロナ諮問委員会）会長のせいにするだけ。この流れを変えようとしているので、皆さんに申し上げます。
　ワクチンだって、国民の半分に接種しても、残りの半分が動いて感染拡大すればみんな政府のせいになってしまう。そうなったら損をするのは飲食店であり、ハイタクであり、ホテル・旅館であり、それを防ぐためにも皆さんと一緒に行動したい。
　このほか、次々と議員らの発言が続く。
松島みどり（東京）　地方創生臨時交付金を活用して、ニューノーマルタクシーの自己負担分を穴埋めすることが実現している都道府県の例があれば教えてほしい。
北九州市でのワクチン接種の際の往復４回分の運賃助成の例も目立つ形で事例紹介して働きかけてほしい。
伊東良孝（北海道）　空気清浄機10万円のうち、半分が助成されるとしても残り５万円を拠出するのはなかなか大変だという話があり、臨時交付金をそれぞれの自治体に働きかけていくことが何よりも大事だろうと思うところであり、議連としてもしっかり取り組むことが大事だ。
西銘恒三郎（沖縄）　沖縄の状況だが、全国10都府県の緊急事態宣言の影響のせいか、年間1000万人の観光客が300万人くらいに減っている。加えて県独自の緊急事態宣言で午後８時以降の外出は控えるようにとか、大変厳しい状況になっている。
沖縄県のタクシー協会でも臨時交付金を活用するよう県や市町村に要請しており、交付金の活用に協力できるよう全力で頑張りたい。
西田昌司（京都）　乗務員の感染予防は大事だが、実際にはタクシーでも窓を開けており、マスク着用に敏感になり過ぎない方がいい。エビデンスに欠けることをやり過ぎているのではないか。空気清浄機の導入には賛成だが、乗務員さんも通常はマスクを着用しており、換気もされている中でさらに安全になるとはいえ、少々素朴な疑問は持っている。
　また、コロナ禍とは直接関係ないが、ＪＰＮタクシーはハイブリッド車だが、ＥＶの話がタクシー業界からは全然出てこない。燃料代も含めてトータルではかなり安くつくのではないか。電源供給にも役立ち、災害時に地方では貢献できる。その辺りどう考えているのか。

ＰＣＲ検査付ＧｏＴｏトラベル
中村裕之（北海道）　今日も北海道の観光関係団体の方々からぜひ、ＧｏＴｏトラベルキャンペーンを早めに再開してほしいとの要望に来られていた。細田先生からお話しのあったように、ＰＣＲ検査付ＧｏＴｏトラベルのように、検査で必ず陰性確認をするということを仕組みとして作って動かしていけばどうかと思う。
細田　航空業界にも言っていたことだが、北海道と沖縄は島なんだから、これだけ感染が広がってしまうことは変なことなんだということ。少なくとも北海道行と沖縄行の飛行機に乗る人には全員検査をさせなさいということだ。陽性の人を除外して飛べば安全なんだから。現地での旅館やホテルのことはあるが、これだけでもかなり防ぐことはできる。
　そういうことをどうして皆が言わないのか、どうしてそこにお金を使わないのかということ。いまのままで解除して感染者数が増えれば国のせいだと言われるだけだ。
宮沢博行（静岡）　静岡は愛知と神奈川に挟まれている。緊急事態宣言の対象地域にはなっていないが、それによって消費者心理はものすごく冷え込んでしまっている。
　一方で、緊急事態宣言が出ているが、飲食店と直接の取引がないということでタクシーは補助が出ないという構造になっている。臨時交付金の話があったが、ワクチン接種の際の高齢者輸送への補助などもしっかりできるようにしていただきたい。雇用調整助成金についても、直接には経営の足しにはならない。ナマで支援できるのは交付金の活用などだと思う。役所が言うことを聞くのは役所なので、そこのところしっかり対応していただきたい。
津島淳（青森）　青森も緊急事態宣言は出ていないが、マインドには影響が及んでいる。タクシー代行を含めて夜の収入はものすごく減っている。加えて雪によって外出を控える傾向が強まっており、昼の動きも鈍っている。
　タクシーは大変厳しい状況だが、ワクチン接種でも特に集団接種方式を取るような地域では、そのための輸送手段にタクシーを組み込んでいくということを提案したい。

社会保険料等の減免、ワクチン配送など
衛藤晟一（大分）　社会保険料等の納付についても繰り延べから間もなく１年になる。期限が来れば２年分払わなければならなくなる。これからは社会保険料や各種の税などについて本気で免除するとか考えないといけない。
　現場の事業者をまわってみると、「１年間は良いけれど、その先はどうなるんだろう」という声を聞く。あまり大きくないタクシー会社は「本当に苦しい」と言っている。
木村哲也（千葉）　ワクチンの配送についてだが、全国各地で接種会場等にどのようにワクチンを配送するかということが検討されている。千葉県船橋市の例だが、貨物運送事業者にお願いするのに加え、タクシー会社にワクチン配送できないかと相談したら断られたという。人を乗せずにモノを運ぶには貨物運送の事業許可が必要ということのようだ。タクシーで運ぶことが、ワクチンの効能への影響がないかなど確認する必要もあるが、そもそも貨物運送事業の許可ないとタクシーではワクチンを運べないということがどうなのか。
　これら以外にも一応、発言者の名前を列挙しておくとおよそ次のようになる。片山さつき氏（東京）、武井俊輔氏（宮崎）、三ツ林裕巳氏（埼玉）―。　
　国交省の対応を質す意見もあったため、この後、大辻・旅客課長や秡川・自動車局長らが答えられる範囲で回答している。ただし、すでに冒頭で説明したことの繰り返しであったり、厚労省の領分に関するものについては即答を避けている。

あとは地元での働きかけ
　これらのやり取りからも、ニューノーマルタクシーへの３次補正からの補助で足りない分のみならず、地方創生臨時交付金を活用するため自治体へ働きかけることについては、議員ら自身も賛同しており、「力添えをお願いします」と国交省も言っている。あとは、全タク連傘下の各都道府県タクシー協会や地域の事業者がそれぞれの地元自治体に働きかけるだけ。その際に地元地方運輸局・運輸支局や地元選出議員の力を存分に借りるだけだ。
　また、ＧｏＴｏトラベルの再開に当たってＰＣＲ検査や抗原検査をセットにするというアイデアは議連では初お目見えだが、可能ならぜひとも実現してほしいところ。
一方で、新規感染者の増減を官民の連帯責任とする考え方については賛同しかねる。コロナ上陸の初期段階でコントロールに失敗したのは明らかに政府の責任であり、その後の尻ぬぐいも含めて民間ができること、協力できることに出し惜しみはすべきではないが、責任を押し付けられるのはゴメンだ。
　全体として良い議論だとは思ったが、選挙が近いせいか、さりげなくおかしな主張も差し挟まれていると感じた次第だ。

ダイナミックプライシングには触れず
　一方、政府の規制改革推進会議でタクシー運賃料金に関するダイナミックプライシングのヒアリングが近いというこのタイミングで、その問題に触れる事業者や国会議員が１人もいないことに少々の違和感を持った。全タク連として運賃本体部分の変動制を受け入れるつもりなら記者が口を挟む余地はないのだが。（了）
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