【大阪】23年度第1回の大阪市地域公共交通会議（会長＝内田敬・大阪公立大学大学院工学研究科教授）が6日、大阪市北区の同市役所本庁舎で開かれた。北・福島両区および生野・平野両区のオンデマンドバス（大阪メトログループ）、キタ・福島エリアで展開するｍｏｂｉ（コミュニティモビリティ）の社会実験における乗降場所の加除、22年度および23年度（中間）の利用状況、「事業継続に向けた目指すべき姿」について、それぞれの報告を受け、質疑応答が行われたが、時間短縮が図られ、多くの質問の回答は9月半ばに開催予定の次回会合に先送りされた。次年度からの本格運行の是非を判断できる報告ができるかどうか、次回の会合が重要になりそうだ。

〜「高齢者の足」のはずが…
　報告されたオンデマンドバスの利用状況（4月1日〜5月31日）は、年齢別利用者数では「生野・平野は20〜50代まで幅広く」、「北・福島は30・40代の利用者が多い」、乗合率は「生野は30〜40％」（直近６月は39％）、「平野は20〜30％」（同34％）、「キタ・福島は20〜30％」（同25％）。事業継続に向けた目指すべき姿については、23年度を通し増車による利用拡大を図り、配車システムの改修、車両の最適配置化による運行効率向上で25年度までに22年度対比で運賃収入を生野・平野で1.9倍、キタ・福島で1.4倍に拡大する一方、支出を3割減にし、法人向けサービスや貨客混載、関連サービスなどで収支均衡を図るとした。
　一方、ｍｏｂｉは「月別利用回数は上昇傾向」、「両区とも平日の午前7時台、夕方の午後4時から6時台の利用割合が高い」、「利用目的は買い物が最多だが、観光利用も見受けられる」、「移動のボリュームゾーンは1.2〜2.7キロ」「相乗り率は3分の1から2分の1に上昇」―などと報告し、不備が指摘されているバリアフリー対応では北・福島両区で各1両、乗降用オートステップを実装したとアピール。持続性を目指した今後の取り組み目標として、料金・サービスプランの変更や交通弱者の移動促進など、新しい移動ニーズへの対応などを挙げた。

〜実証実験の収支、公表を
　全大阪個人タクシー協会の山口敏副会長はオンデマンドバスの計画が25年度まで継続したものになっていることについて、「実証実験は23年度までではないか。当初は高齢者の足ということだったが、30〜50代の利用が多く、目的を逸脱している。持続可能性も常に問うているが、本格運行にするというなら、今までの実証実験の中でどれだけのコストがかかって、どれだけの収益があり、これからどうするんだということを数字で明確に表してもらえないか」と、注文を付けた。
　メトロ側が「経営情報のため、金額的な公表は本日は控えたい」としたため、山口氏は次回か次々回での公表を求めた。
　日本城タクシーの坂本篤紀社長は、持続可能性について「今までは高い車両、多額の資金を投入して大丈夫かと問うてきたが、ここに来て人の問題が出てきた。タクシー業者が協業で人の供給を手伝っているが、すでに本業のタクシーの乗務員が足りない。人材確保には昇給も必要。しかし（オンデマンドバスの）受託金額は変わらない。計画には多額の報酬を払うとか固定給で雇うといったことも書かれていない。元市長は大阪全域に走らせると言ったが、そんなことをするにも到底乗務員は確保できない。現在、運転の仕事の有効求人倍率は3倍だ」と指摘。現状では事業継続は困難との認識を示して見解を質した。
　メトロ側は、「運転者不足は全国的な問題。グループとしてオンデマンドバス専用運転者の採用を今後検討していきたい。短時間勤務や朝・夕のみの勤務とか柔軟な勤務時間メニューを設定し、働き手の生活サイクル、多様なニーズに対応できるように労働時間を創意工夫していきたい」と回答した。
　坂本氏は、「地下鉄の車内広告で万博のバス運転者の募集を時給2000円で行っている。免許の最高峰の大型2種の運転者が2000円なら、それより小さいオンデマンドバスは先が見えている。いくらで安全運行を担わせるのか、はなはだ疑問。横浜市営バスは平均年収700万円で黒字を出している。持続可能性の面からも、運転の仕事への対価はもう少し考えていくべきだ」と述べた。
　ｍｏｂｉに対してはバリアフリー対応の不備への指摘が継続してあり、特に黒のワゴン車が多く、目の不自由な人からは「夜に走ってきても識別できない」などの苦情も出ていた。
〔7月8日号関西版掲載〕　<Topへもどる>