【東京】国交省の森哲也・旅客課長らは22日、ラストワンマイル・モビリティ／自動車ＤＸ・ＧＸに関する検討会終了後、記者向けブリーフィングを行い、現行の制度・運用の改善策案については大筋で委員の了解を得、6月の次回会合で成案を示すとしたほか、道路運送法関係省令や通達を改正し、7〜8月中を目途に実施するスケジュールを示した。課題の後半部分に当たる自動車ＤＸ・ＧＸとテーマに追加された「担い手の確保」については6月中に検討会を2回開催し、ヒアリングも実施する考えを示した。
森課長の主な発言要旨は次の通り。
　▽とりまとめ案の文言の修正を反映した成案は次回の会合でお示ししたい。7月1日に改正地域公共交通活性化法のうち一部が先行実施される。それが一つの目安になり、合わせて省令・通達が施行できればと思っているが、パブコメ期間（1カ月）を考え合わせるとやや厳しいかなと思う。広い意味では夏の間、7〜8月には施行できるだろう。改正地活法全体の施行が10月1日だが、そこまで遅れることはないと考えている。
　▽個人タクシーについては地域のニーズに応えてもらおうと考え、事業者の中で自らの出身地などに戻って、あるいは移住していわゆるＵターン、Ｉターンしてという意欲のある方もいるとの声に応えようというもの。今回の施策で地方運輸局長が認めた人口30万人以上の都市を含まないエリアで個人タクシーが営業できることとした場合でも、例えば北海道のような広大な地域で誰とも連携をとらず1人で営業するというのはさまざまな観点から無理があるのではないかとの議論もあったため、地元の法人事業者と運行管理などで連携をとり営業するなどある程度組織的な動きにしていく必要があるだろうということで「当該地域における地理や実情に通じた法人タクシー事業者による運行管理を条件とする」としている。原則地元の法人事業者を意味するが、そこに法人事業者がいない場合には離れた都市部の法人事業者と連携するということもあるだろう。

〜文言なしでも「出張所」可能に
　▽施策（1）最低車両数の緩和（2）営業所の施設設置要件緩和（3）運行管理のＤＸの推進―を組み合わせると、東京に拠点営業所があって離れた地域に営業所としてのフルの機能を持っていない「出張所」を置くことができるようになる。台数も少なく、運行管理も遠隔点呼でできることにして、乗務員と車だけがあって休憩所もなくてもいいというようなものを機動的に置き、都内の拠点営業所から個々の乗務員に指示を出すということも可能にする。出張所についてはとりまとめの施策のペーパー案には当初入っていたが、結局（1）（2）（3）足し合わせではないかということ、結果として可能になるということで書かないことになった。通達として成案が施行されればこの出張所の設定は可能になるが、通達の文言としては「出張所」という言葉は出てこない。各地方運輸局の局長や自動車交通部長と何度も議論して、こうした出張所的なものはあって良いという声もあった。現在営業区域をもっていない事業者が出張所を置くことでその区域をカバーすることもできるようになると考えている。

〜最低車両数「2両」が目安？
　▽最低車両数については、現行制度上、離島などでは柔軟に運用できることになっており、そうした例では１両ということもある。全タク連が実施したアンケート（調査対象は約1000社）によると、「最低車両数を削減してくれれば引き続き営業できる」という事業者が40％くらいあり、さらにその半分くらいが「2両になれば」と回答している。これも一つの目安になるかと思う。そこは各地方運輸局長の判断に任せたいと思う。
　▽事業者間の遠隔点呼の拡大については各地域からの要望が強く、特に地方の夜間の駅前ではまずタクシーがいないという状況もある。そういう地域での事業者の声として各社が運行管理者を出勤させて、同じ地域の会社すべてが同じことをやるにはコストが掛かり過ぎるということがあり、どこか１社が点呼や運行管理をやってくれて各社が数両ずつ車を出すということなら夜間のサービス提供も可能になるという声が現実に出てきている。遠隔点呼そのものは同一事業者内等ですでにやっており、範囲を広げることで地域の課題を解決できるのであればということで実証実験から始めようということ。同一の資本とか協同組合である必要はないこととする。

〜タク運賃の8〜9割？
　自動車局では安全政策課がまだスケジュール感をはっきりとは示していないが、そこは彼らのやり方で進めていただくということになるだろう。
　▽自家用有償運送の対価については、タクシー上限運賃の概ね2分の1という設定を廃止するだけではダメで、届出を受ける地方運輸局・運輸支局が困るようではいけない。そこは困らないよう示していく必要がある。施策としては考え方しか書いていないがタクシーの運送原価のうち利潤とタクシー固有の費用（営業所、車庫等に係る償却費用等）を除いたものが実費だろうということになるのではないか。これまでの2分の1は、ボランティアということでドライバーの人件費などを考慮していないのでは。また、自治体から出る補助なども踏まえて最終的に利用者が払う金額はどうなるのかということも考える必要があり、現行制度は事業の持続可能性の観点では好ましくないと考えている。こうした考え方に基づき、実際に地方運輸局・支局が届出を受ける際に困らないようなものを示したい。タクシー運賃との関係でどのような書き方ができるか難しいところだが、その8割、9割が現実的なところではないかとは思う。
〔5月27日号関東版掲載〕　 <Topへもどる>