全国48ブロックにおける運賃改定の見送りについて川鍋氏は、驚天動地、青天の霹靂と繰り返し、タクシー事業に造詣の深い赤羽一嘉国交相の就任を歓迎するとともに、自民、公明、野党系超党派のタクシー議連等との結束を強くし、「業界の30年後に向けてタクシーの進化に取り組もう」と呼びかけた。
　川鍋氏は近年繰り返される自然災害の被害に触れ、鉄道等の計画運休の増加につれてタクシーの役割も増し、「タクシーは最後のライフラインということが実感されているのではないか」と述べた。また、トヨタ自動車の豊田章男社長との自工会の会合での会話を引用しＵＤタクシー車両でもあるジャパンタクシーが災害時に蓄電池の役割を果たし、機材の充電に使われたり、明るい車内が移動オフィスとして活用されていることを紹介。ガソリン不足が生じてもＬＰガスを燃料とすることで災害に強いタクシーの特性を強調し、「タクシーはこれから黄金時代を迎えると確信している。人も物も情報も載せてタクシーが走り続けると地域が安全になる」との考えを示した。一方で、「しかし乗務員がいなければならない。幸いにも自動運転に近づいている。これから人が介する運転の機能は減っていく。その分ホスピタリティが充実したタクシーが走り続けることが必要だ」と今後の方向性を示して人材確保の重要性に言及した。
　自家用有償旅客運送の拡大に関して川鍋氏は、新たに発足した政府の規制改革推進会議に警戒感を示しながらも、「未来投資会議の結論としては日本では、タクシーを基本としタクシー事業者にできない場合のみ、自家用有償旅客運送だと思っている」と強調。その上で、自家用有償旅客運送においてタクシー事業者そのものを実施主体と認めると、２種免許という防波堤を失う危険性があると指摘。「人がいないから１種免許でも良い―と飛びついてしまうと、結局、『タクシーじゃなくても良いのでは』ということになりかねない」と述べ、自家用有償旅客運送の規制緩和は限定的なものとし、２種免許制度崩壊につながる制度改正はタクシー事業の崩壊を招くとの見方を示し、外国人労働者の採用や自動運転などの運転補助装置の発展に伴う運転技術に関するハードルの低下に伴う２種免許取得要件の緩和とは本質的に異なると強調した。その上で交通政策審議会・地域公共交通部会での今後の論議の行方を注視する必要性を説いた。
　規制改革推進会議については、メンバーが一新されて「本気で自家用車ライドシェア解禁を志向する人はいなくなった」としながらも「新たな19人の委員がどの程度ライドシェア問題を取り上げる気があるのかどうかは分からない。今後を注視していく必要がある」とした。また、川鍋氏は「われわれの知るライドシェアは、ワーキングプア製造装置だ」と強調し、タクシーの進化に期待する声は日増しに高まっているとの見方を示した。
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