ハイヤー・タクシー業界専門情報紙  株式会社 交通界
2019年8月26日

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「週刊交通界21」毎月4回情報発信

ギグ・エコノミーの実態明かす潜入ルポ
 それでもなお、日本に持ち込む意味があるのか…

 英国人フリージャーナリスト=ジェームズ・ブラッドワース氏の近著『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』(濱野大道訳、光文社、1800円税別)を読んでみた。副題には「潜入・最低賃金労働の現場」とあり、いかにも刺激的なタイトルだ。アマゾン、ウーバーにとどまらず、訪問介護の現場やコールセンターなど、近年必要とされていながらも非常に低い水準の賃金、劣悪な労働環境にさらされている「ギグ・エコノミー」の働き手の実態を自ら体験した上で告発するものである。そこで、本欄ではライドシェアの労働の現場、この場合ウーバー英国法人でドライバーとして働いてみた同氏のレポートを紹介してみたい。ただし、同書では、ギグ・エコノミーの悲惨さの一端を紹介しているが、「ではどうすべきか?」を読者一人ひとりに考えるよう促してはいるが、「だから既存のビジネスモデルの方が優れている」という主張ではないし、イノベーションによる新サービスの登場を頭から否定はしていない。ライドシェアについてもウーバーの英国法人が対象であったため、タイトルにもウーバーの名前が挙がっているが、米国発祥型の典型的ライドシェアプラットフォームには同じような問題点が内包しているであろうことは想像に難くないという点にも留意が必要だ。

執筆の動機
 筆者のブラッドワース氏は同書の「はじめに」において、「現在、イギリスでは約20人に1人が最低賃金で生活している。そのような人々の多くは、かつて産業と製造業の中心地として栄えた町や大都市に暮らす。国内で生まれたイギリス人も多いものの、最近では海外からの移民も増え続けている」「今日のイギリスの低賃金労働者について探るためにはどうすればいいか?私が出した答えは、自分がその一部になるというものだった」とし、「その旅の中で私は、生活賃金(*人が最低限の生活を維持することに必要な生計費)さえ支払おうとしない会社に潜入する」と書いている。
 また、2008年のリーマンショックにも触れて、「世界金融危機のあと、自営業者が100万人以上も増えた。その多くがインターネットなどを通じて単発の仕事を請け負う“ギグ・エコノミー”という働き方を選んだが、彼らに労働者の基本的な権利はほとんど与えられていない。週5時間働けば、政府が定義する『失業者』には含まれなくなる。しかし、そのような仕事で家賃を支払うのは至難の業だ」とも指摘している。
 次に、筆者は「現在のメディアは、会社の取締役、経営者、官僚の意見や、一定の政治的色彩が正しいという考えに染まってしまっている。だからこそ私は、自分で感じた疑問を労働者やホームレスの男女に直接投げかけたかった。彼らの上司や、彼らが路上生活に至る理由を説明する“理論”を語る研究者に話を聞きたかったのではない。つまり、ほんとうの状況を知らない人によって書かれた本や新聞記事の受け売りの情報を読むのではなく、自分の目で真実を確かめてみたかったのだ」と主張する。
その上で筆者は、「結局のところ、これは21世紀の労働者階級の生活についての本だ。多くの人にとって、かつては誇りの源だった“仕事”は、尊厳と人間性を奪おうとする容赦のない攻撃に変わった。本書はその変化を記録しようとする試みである」という。
 なお、本書は英国において2017年に発刊され、日本では19年3月に翻訳出版されたものであるから、筆者の潜入取材は16年から17年中盤にかけてのものである。その後のギグ・エコノミーに関する各種訴訟の判決や政府などによる規制環境の変化などはまだ織り込まれていないことを本紙としてもお断りしておかなければならない。
本書の構成は次のようなものである。「はじめに」「第1章 アマゾン」「第2章 訪問介護」「第3章 コールセンター」「第4章 ウーバー」「エピローグ」「原注」からなる。本稿では、先に取り上げた「はじめに」にある執筆の動機以降、「第4章 ウーバー」から紹介する。

ギグ・エコノミーとは何か
 ロンドンの下町に住むギグ・エコノミーの労働者、移民であることも多いが、彼らの住む典型的な住居はベッド1つに1.8×3メートルほどの段ボールで仕切られたスペースに家賃は週80ポンド(今日のレートで1ポンド=130円、約1万円)だという。ロンドンの人口増加に住宅供給が追い付かず、家賃は上昇の一途をたどっているという。また、10年から17年にかけてホームレスは34%増加しているとする。筆者によるとギグ・エコノミーとは、「フリーランスの『単発の仕事(ギグ)』によって成り立つ急成長中の労働市場」ということになっている。自由な働き方を謳歌できるとされるギグ・エコノミーの参加者は08年のリーマンショック後の世界金融危機を経て急速に増加したとし、いわゆる自営業者は08年時点で英国に380万人いたとされるが、16年初めまでにその数は過去最高の470万人に増えたという。
 筆者は、「かつて固定給と所定の労働時間という枠組みの中で行われていた仕事―労働者に最低賃金、有給休暇、雇用契約が与えられる仕事―がいまでは、そのような恩恵を受けられない『自営の請負人』として分類される人々に委ねられるケースがどんどん増えていった」「この種の仕事を提供するアルゴリズムを操るのは決まってハイテク企業であり、その多くはアメリカ・カリフォルニア州のいわゆるシリコンバレーに拠点を置く会社だった」と書く。ライドシェアドライバーも雇用労働者ではなく、請負業であり、ギグエコノミーの典型にあたるとされる(少なくとも、プラットフォーム側はそう主張していた)。

ウーバードライバーの急増
 筆者はまずロンドン市交通局(TFL)にウーバードライバーになるために必要な職業運転免許の申請を行い、結構簡単にこれを取得する。
 当時、ウーバーで働くドライバーの人数に上限がなく、その数はここ数年の間に急増したとされ、TFLによるとロンドンの民間タクシー車両の運転者数は過去7年で倍増し、その数は11万7000人を超えたとしている(*いわゆるプライベートハイヤーのドライバーを指すものとみられる。15年にはライドシェアドライバーが既存ブラックキャブのドライバー数を上回ったようだ)。12年にウーバーの利用者数は5000人ほどだったが、16年までには170万人に急増しており、ウーバーはドライバーの確保に躍起になっていると筆者は指摘する。
 また、筆者は「どんなにドライバー数を増やしてもウーバー側には埋没費用は生じず、税金関連の事務処理が増えるわけでもなかった。請負人であるドライバーとは出来高払いの契約を結んでいるため、仕事がなければ支払いは発生しない。最低賃金を定める法律も適用されないどころか、ドライバーたちは一連の雇用権法の権利を行使することもできなかった。なぜなら会社によれば、彼らは被雇用者には当たらなかったからだ」と書いている。
 筆者によれば同時期にウーバードライバーになろうとした同僚たちの話では、みな好きな時に好きなように働けるというギグ・エコノミーの特性を愛したことがうかがえるが、筆者自身も「自営業の不安定さが産む“暗雲”について充分理解できるようになったのは、仕事を始めたあとのことだった」と振り返っている。
 事業許可や運転免許などの手続きを終えると仕事を始めることになるわけだが、ウーバーのような破壊者がロンドンの既存タクシー市場にどれほどの影響を与えているかについても筆者は触れており、ウーバードライバーとして信号待ちしている時の様子を次のように書いている。
 曰く、「私は時々誰かに見られているという感覚に襲われた。急いで交差点を曲がると、彼らはそこにいた―怯えたようなしかめっ面の顔、こちらをじっと見つめてくるふたつの充血した眼。怒ったブラックキャブの運転手だ。ときに彼らは、意味不明の悪口を大声で叫ぶことも有った。そして不機嫌な伝統主義者たちは走り去りながら、顔をゆがめて険しい表情をつくり、お決まりの罵り言葉を連発した―「クソ野郎!」「死ね!」。ときには、「スト破り」という単語が飛んでくることもあった」と。

自由な働き方という欺瞞
 それでも多くの新人ウーバードライバーは自由な働き方と他の仕事より高い報酬が期待できると考えてこの仕事を選んでいる。
 しかし、筆者は、「このシステムについてもっとも注目すべき重要な点は、いったんアプリにログインしてしまえば、どの仕事を引き受けるかについてドライバーに選ぶ権利はほぼないということだ。(中略)真夜中に40分かけてロンドンの反対側に行き、また戻ってこいとアプリが指示すれば、ドライバーはその通りにしなければいけない。さもなければ、ウーバーから罰を受けることになるだけだ(まずアプリからログアウトされ、次に事務所に呼ばれ、最後にはアカウントが永久に無効化されてしまう)」「私がこの仕事を通してわかったのは、さまざまな面において『自営業』は言葉の錯覚でしかなく、現実とはほぼ乖離したものであるということだった」と書いている。
 事実上、ドライバー側が仕事を取捨選択することはできず、その仕組みは相互評価システムによってさらに補強されているという。5つ星が最初に与えられているが、中長期的に星を維持することは難しく、渋滞などの不可抗力によって予定時間に遅れると利用客が怒り出して評価を下げられることも間々あるし、より弱い立場の者に横暴にふるまう乗客もしばしばだという。
筆者は「ウーバーは直近50回の評価に特に注目した。数人のやっかいな客によって平均点が下がると、ロンドン中心街にある事務所に『研修』のために即座に呼び出される可能性があった。平均スコアが4.5より低い状態が続くと、ウーバーアプリの使用そのものが禁止されるケースもあった」としている。
 ウーバーの企業としての体質はこれまでトラビス・カラニック・前CEO個人の資質によって体現されてきた。筆者によると、「2017年にCEOのカラニックは、自身で同社のサービスを利用中、賃金について不満を訴えた現役ドライバーと激しい議論を交わし、窮地に追い込まれてしまう。白熱した議論の中でカラニックはドライバーに冷たく言い放った。『自分で自分のケツを拭けない人間っていうのがいる。そういうやつらは、人生のあらゆることをほかの人のせいにする』おまえが貧乏なのはおまえのせいだ。自分で自分のケツを拭くことから逃げてきたからだよ」と。
 このような中、16年10月、英国の雇用裁判所はウーバードライバー2人によるドライバーは請負か労働者かを争う訴訟提起に対し画期的な判決を出したとされ、その中で「ロンドンのウーバーが、共通の“プラットフォーム”によって結ばれた3万の小さな会社の寄せ集めであるという考えは、私たちが考えるに甚だバカげている」「ドライバーはそもそも乗客と交渉はしないし、することもできない。… 彼らはウーバー側の条件に厳密に従い、与えられた仕事を受け容れているだけである」としたという。
 判決に従いドライバー側は有給休暇の申請をしたが、会社側はこれを却下し、控訴。しかし、控訴審でも敗北し最高裁への上告を模索中であるとする。

価格競争で失われるもの
 次に筆者はウーバーのビジネスモデルの構造的欠陥を突く。曰く、「ウーバーのビジネスモデルは、市場が継続的に拡大するという考えに基づいたものだった。従来のタクシー会社の料金よりはるかに低い額まで運賃を下げることによって、ウーバーはそれまで閉じ込められていた需要(専門用語でいえば『流動性』)を利用できると考えた。ところが、ドライバー数に上限を設けないところを見ると、ウーバーは永遠にこれを続けることができると信じていたようだ。会社が市場を拡大し続けることができれば、より多くのドライバーが料金を安くするために競争し、同時により多くのお金を稼げるようになる。つまり全員にとってウィン・ウィンの状況が訪れる。少なくともそれがウーバーが声を大にして主張していたことだった」と述べている。
 その上で筆者は、「ドライバーの供給が一定のレベルを超えたとき、ウーバーが予想した流動性のレベルを基準に構築されたシステムは、大量の無駄を生む恐れがあった。ここで注目すべきは、その無駄なコストを誰が負担するかということだ」とし、そのツケを払うのはドライバーではないかと指摘する。
 利用者の利便性を確保するためにはピーク時の需要を満たすために必要な数よりももっと多くのドライバーが路上にいなければならないと指摘し、「たとえ後部座席に乗客がいなかったとしても、アプリにログオンしていればドライバーはプラットフォームにサービスを提供していることになる。16年の裁判では、裁判官たちはこの点を指摘するために17世紀の詩人ミルトンの言葉を引用した―『ただ立って待っているだけの者も役に立っている。』ウーバーのサービスの成功は、ロンドン中を車で走りながら携帯電話の通知音を待つ余剰人員の一団の上に成り立っていた。しかし、個々のドライバーは、街の至る所でただ車を走らせているときには事実上損をしていた。その間、ウーバーは何も失っていなかった。ウーバーはそのリスクを、どんどん数を増していく個人事業主の集団に負わせたのだ」と書いている。
 このほか、ウーバーと言えば需給のひっ迫度合いに応じて価格が変動するサージプライシングが有名だ。我が国のタクシー業界でもダイナミック・プライシングなどとして行政主導で検討の俎上に載せられつつある。筆者は次のように書く。
 曰く、「事実上、このピーク料金にはドライバーの労働意欲を刺激し、市内のタクシーの配車バランスを正す効果があった。それでもドライバーは、世間での『ウーバー=超低料金』のイメージから完全に逃れることはできなかった」「ウーバーの客はとにかく安い料金に慣れてしまっているから、ピーク料金が発生すると、自分たちがゆすられているような気持になる」とし、ピーク料金が発生すると評価が下げられることは避けられず、これを回避するために自己負担でミントやミネラルウォーターを提供し始めるという。
 ウーバーの新人研修ではトレーナーから、「お菓子をあげるパートナー(*ドライバーのこと)もいるようです。そのようなことをするのもしないのもすべてドライバーにお任せしています」と語ったとしている。
 もともと安さが売り物のライドシェアサービスだが、こうした現象やそもそも利用者の中には横柄な態度の者も少なくないことについて筆者は、現役の他のドライバーの言葉を引用し、「残念なことではあるけど、低賃金の仕事をしていると、まわりから見下される。誰もこちらに敬意を払おうとはしない」という。価格競争によってサービス提供が身近なものになることによって、ドライバー全体の社会的地位を引き下げるという指摘だ。

社会的コストを他者に押し付けるビジネスモデル
 ギグ・エコノミー従事者の地位を巡るいくつかの訴訟が係争中に、ロンドン市の市民助言局が「46万人もの人が誤って自営業者として分類されている疑いがあることを指摘した」と筆者は書いている。これによって「税収や雇用主による国民保険への支払額が減るため、納税者に年間最大で3億1400万ポンド(約408億円)の負担を強いている可能性があると考えられた」という。
 また、「アメリカの専門家の見積もりによると、自社の従業員ではなく個人の請負人に仕事を依頼すれば、企業は直接的なビジネスコストを25%近く引き下げることができるという。少なくとも、これらのコストの一部は国に、さらには納税者やほかの労働者に押し付けられているといっていい」とも指摘している。
 その上で筆者はこう主張する。曰く、「純粋に自営業者として個人で働く人には、自分がどの仕事を引き受け、どの仕事を収穫逓減の領域にとどめておくのかを決める権利が与えられるべきだ。加えて、むずかしい案件の場合には、引き受けるに値する料金を自ら設定することができて当然だろう。それを実現できない場合には、企業の管轄、管理、監督下にある労働者が有する権利を与えられてしかるべきだ」と。

ロンドン市交通局の決定とその後
 17年9月22日、TFLはウーバーの事業者としての免許を取り消し、同社がロンドン市内で営業することを禁止する処分を言い渡した。当局の声明には「公共の安全と安心に影響を与える可能性のある多くの問題に関して、ウーバーは企業としての責任を果たしていない」と書かれている。具体的な理由として、深刻な犯罪行為の報告を怠ったこと、規制当局からウーバーアプリへのアクセスを妨げる「グレイボール」技術の使用、ドライバーの健康診断や犯罪履歴の確認方法の不備等… 。
 ウーバーが数日後に不服を申し立てたため、直ちに事業休止という事態は回避され、指摘事項に対して同社側が積極的に対応する姿勢をみせたため、同社は事業免許を回復する可能性があると本書には書かれている。

ライドシェアのビジネスモデルを日本に持ち込むべきか
 「はじめに」でも触れられているように筆者は個別具体的な体験を中心に紹介し、ギグ・エコノミーが持つ問題点を浮かび上がらせているが、「だからこうせよ」とは一言も言っていない。
 私たちが忘れるべきでないことは、ギグ・エコノミーが不安定な時代に人件費を削減するための便利な手段としてだけ活用されることを避けなければならないということ、日本の社会風土やタクシー産業にそもそも期待されていることとギグ・エコノミーが折り合うことができるのかということを考え、折り合えないならその理由を明快に説明していくことに尽きるのではないだろうか。(了)

No.784 8月26日号   主な内容
■巻頭人物  :野 公秀氏(グリーンキャブ社長)
■気になる数字:27円  2019年度の最低賃金(時間額)引上げ額の全国加重平均
■トピックス
:ギグ・エコノミーの実態明かす潜入ルポ
            〜それでもなお日本に持ち込む意味があるのか…
:中小事業者団体が生き残るスキーム構築を
            〜チェッカーキャブ無線協組・秋山利裕理事長に聞く
:「プレミアム付商品券」対策を急げ 
            〜消費増税、値上げによる利用者離れに備えを―
:「均一な輸送力の確立」に向け 
            〜日個連都営協・冨本哲哉理事長インタビュー
:健康起因事故増加で注意喚起  
           〜近運局 2019年事業用自動車等の交通事故の概要
:<スポット> 迫る「10.1」キャッシュレス対応は―
:世代交代が進む神戸業界  〜キクヤ交通・大久保泰介社長に聞く
:<スポット> 大タクセンが「ジャパンタクシー」導入
:<スポット> 大型クルーズ船の入港特需
:<スポット> 大タ協に大阪府警感謝状 / 日本城G「塚口タクシー」出発
■東西往来
:制度の隙間を衝く鋭さは…  / 環境変化の中で続けるチャレンジ
■この人この言葉
:中澤 睦雄氏 / 小林 繁樹氏 / 田中 滋修氏 / 金井 郁氏
■シャッターチャンス
:呈した疑義を放置の八百長会議 / 他人事でない高齢運転者の事故
:情報過多でいささか食傷気味? / ミニカーは大人買いもできるが
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Faxpress 関東版
 地域ごと「一定枠確保」の実現を
   譲渡譲受の円滑化は問題点抽出へ
     全個協・秋田会長インタビュー

【 東京 】全国個人タクシー協会の秋田驩長(東個協理事長)は23日、本紙のインタビューに応じ、19年度の主要課題としてキャッシュレス決済対応や運賃改定とともに、東京オリンピック・パラリンピック対応もあげ、間を置かず迫ってくる課題に対応する年―と位置づけた。事業者の減少対策としては、地域ごとの個タクの一定枠(一定数あるいは一定割合)を確保することを要望していくとともに、要件緩和等が実施された譲渡譲受制度の下、運用してみてどのような問題が生じるかを洗い出し、必要に応じて要望をあげていきたいとした。
 秋田氏は、法人業界でスイカなどの電子マネー決済が普及してきたことにより、ICT化に積極的ではなかった地方の個タク事業者も電子マネーを含むキャッシュレス決済が可能な決済端末の早期装着を要望する声が高まっているとする一方、経産省「キャッシュレス消費者還元事業」における決済端末の導入補助制度については、キャッシュレス決済事業者が、地方の決済回数の乏しさから決済端末費用の3分の1負担を渋る傾向があると指摘。ただ、ここにきて都市部で一定の契約数を確保できれば、地方の事業者への対応にも乗り出してくれそうなキャッシュレス決済事業者が出てきているとも述べた。
 今秋から実施される事前確定運賃については、前向きな姿勢を見せつつも、法人業界と足並みをそろえてスタートすることにはならず、一定期間、様子を見た上でのスタートとなるとの見方を示した上で、現在の大方の事業者の関心はアプリ配車システムよりキャッシュレス決済システムの導入の方にあるにもかかわらず、プラットフォーマー側の条件提示で両方導入する流れになっていると指摘した。
 事業者減に歯止めをかける方策では、8月1日から円滑化のための制度改正が実施された譲渡譲受制度の下、実際に手続きを進めて出てくるとみられる不都合や不備(譲渡譲受が完了するまで車検代金など車両維持費を支払い続けねばならない―など)が運用上どの程度の負担となるか等を検証し、必要に応じて法個検討会に要望をあげていくとした。
 今後の政府要望の柱は「一定枠(一定数あるいは一定割合)の確保だ」と強調する一方、「75歳以上の譲渡譲受解禁」などについては高齢化の歯止めとしての実効性を認めつつも、万が一解禁されても一部の地域を除き、譲受者不在・不足という構造問題に直面するだろうとの見方を示した。
〔8月24日号関東版掲載〕  <Topへもどる>

2019年8月24日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】地域ごと「一定枠確保」の実現を/譲渡譲受の円滑化は問題点抽出へ/全個協・秋田会長インタビュー
【 東京 】「ホワイト経営」認証団体/国交省 選考結果近く公表
【 横浜 】東京、神奈川など7地区減収/関東管内 7月の原計輸送実績
【 東京 】アプリ・決済で「均一な輸送力」/確立に意欲 都営協・冨本理事長
【 東京 】UD受講者8万人超え/全福協 今年度7374人
【 東京 】「S.RIDE」4000両基本に/チェッカー無線協組・秋山理事長
【 東京 】自家用有償の消費税転嫁/国交省 運営協の手続き簡略化
【 東京 】提供車両3700両、9割を電動車に/東京オリ・パラ対応でトヨタ
 
2019年8月23日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】特区・武三、多摩とも総需要減/降雨日数など天候条件有利も… /東タク協 7月の原計輸送実績
【 東京 】法人乗務員、再び減少基調に/多摩地区 7月の運転者証等交付
【 東京 】東タクセンと質疑も/中労協・中労研が夏季合同セミナー
【 東京 】交通事故被害者の創作展/NASVA 9月2〜8日
【 東京 】JpnTaxiタブレット/奥多摩の横川観光が全車搭載
【 東京・千葉 】次世代モビリティサービスなど/SB、モネが千葉市と包括連携協定
【 那覇・東京 】DiDi 沖縄で配車サービス/20者参加、無料キャンペーンも
【 東京 】禁煙外来の費用助成/豊玉タク 募集に31人
【 東京 】ナビの不具合事例など集計/日交G連絡協・幹事会
【 仙台 】宮城県B地区、運改審査へ
【 横浜 】車停は法・個各3件/関運局 7月のハイタク行政処分
 
2019年8月21日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】消費税転嫁で原案承認/時間切れ「意見交換なし」に異論も/特区・武三のタク運賃巡り消費者委
【 東京 】両地区とも需要の低迷続く/東タク協 6月の全社輸送実績
【 東京 】改善基準告示見直しへ専門委/労政審に新設、今秋検討開始へ
【 東京 】日の丸交通TokyoBay/建設中新社屋の概要公表
【 東京 】大和自交 第1四半期連結決算
【 東京 】国家戦略特区巡る疑惑報道/民間議員らが毎日新聞に再抗議
【 東京 】英語接遇検定に19人合格/東タクセン、合計340人に
【 東京 】9月CPはさらに下落も/LPG9〜11月の先物市場
【 東京 】対ライドシェア決議働きかけ/9月議会にハイタク労働8団体
【 横浜 】悩み、愚痴聞く「相談タクシー」/三和交通が予約運行を開始
【 福岡 】長崎で「子どもサポートタク」/第一交通産業、運行開始
【 東京 】大会に向け活動方針案など決定/KPU東京地連・中央委
 
2019年8月9日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】タク運賃への消費税転嫁で論議/実働率の適正水準など、国交省に質す/特区・武三の運改巡り消費者委
【 東京 】法人乗務員、前月から152人減/東タクセン 7月の運転者証等交付
【 東京 】堀切交通を永年登録表彰/7月のグリーン経営認証
【 東京 】恒例の優良乗務員表彰式/グリーンキャブ、家族招いて祝う
【 福岡 】第一交通産業 第1四半期連結決算
【 東京 】DiDi 東京で予約配車開始
【 東京 】ステッカー、ポスターで周知図る/多摩「こどもを守るNW」が総会
【 横浜 】「白タク合法化阻止」など要請/関東交運ハイタク部会が関運局交渉
 
2019年8月9日号−2 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】ハイタク事業場の法令違反85%/ 改善基準告示違反は32.5%で/厚労省 18年監督指導・送検状況
【 東京 】「タッくん」の着ぐるみ、大人気/こども霞が関見学デー
【 横浜 】「値上げ」であることも明確に/運改広報で神タ協・石川委員長
【 横浜 】大スクリーンでPR/神タ協「タクの日」イベント
【 東京 】安全指導業務の普及に寄与/NASVA 18年度業務実績
【 東京 】中核リーダー養成研修会/全個協関東支部が開催
【 横浜 】累積違反点数20点超、タクは4社/関運局管内・6月末時点
 
2019年8月7日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】添付書類等の簡略化など/ 地域実情に応じた弾力的運用を/全タク連 事前確定運賃申請で要望
【 東京 】「過去最大の引上げ」を強調/最賃「目安」で根本厚労相
【 東京 】川鍋会長「世界に誇るタクシーに」/東タク協「タクの日」感謝祭で決意
【 東京 】今年も交通遺児育成基金に/全タク連「タクの日」の寄付
【 東京 】利用者にオリジナル扇子など/東京無線「タクの日」キャンペーン
【 訃報 】二村 博三氏(東京交通新聞社名誉会長)7月28日死去。90歳
【 東京 】大和自交G2000両も可能に/みんなのタクシー「S.RIDE」
【 東京 】QRコード決済開始を報告/東京無線協組・理事会
【 北京 】自動運転部門を子会社に/滴滴出行 事業開発等に注力
【 東京・札幌 】配車PFでデマンドバス予約/モネ社が北海道安平町と提携
【 横浜 】京浜の若年層が増加/7月の運転者証交付
【 福岡 】福岡市等で運改要請開始
【 東京 】グループ新卒乗務員らも参加/日の丸自動車深川労組「BBQ大会」
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 法人の優良事業者94社 
   10月開始へ評価委 大阪市域、全事業者の54% 

【 大阪 】10月1日に大阪市域交通圏でスタートする「優良事業者等評価制度」の承認機関にあたる優良事業者評価委員会が23日、大阪市中央区のドーンセンターで開催された。7月16日から31日までの受付期間に申請した110社(9522両)のうち、94社(8327両)が91点以上の合格ラインに達した。個人事業者は2693者のうち1953者(マスター1308者、ふたつ星544者、新たに個人なったひとつ星101者)が優良事業者候補とされ、全会一致で承認した。大阪市域の法人事業者は175社(1万3016両)で、申請率は62.9%(73.2%)。優良事業者94社(8327両)が全事業者に占める割合は53.7%(64.0%)となる。
 認定機関である大阪タクシーセンターが評価基準に基づいて審査し、評価委に報告。委員会では特段異論も示されず、審査結果通りの承認となった。落選した事業者名や各事業者の詳しい点数などは一切公表されなかった。
 審査結果は9月上旬までに各事業者に「優良事業者認定審査結果通知書」として送付され、認定された優良事業者(法人は事業者名、住所、電話番号、個人は事業者名のみ)は、優良表示票を掲示して運行を開始する10月1日にタクセンのホームページなどで公表される。

〜「実働車両ゼロ」で減点なし!?
 この日の委員会では、いくつかの問題点も示された。ひとつには申請事業者の中に「実働車両ゼロ」(実働ゼロのため、無事故・無違反、接客マナー等でのマイナス要因なし)といったケースが含まれていたもようで、今後こうした事業者を「(確実に)排除する方法を考えるべきではないか」との指摘があった、また、措置要綱に基づく違反行為については、センターの講習を受けることで違反点数が消えていくが、「こうしたものもきちんと累積で残していくべきではないか」との意見もあり、次年度に向けての課題とされた。
 加えて、評価制度実施要領の一部改正(優良事業者の公表に関する規定の見直し)も提案され、認定を受けた法人については、当初「事業者名」「住所」「電話番号」さらに「保有台数」を公表することになっていたが、これを改め「保有台数」を削除、さらに個人については「プライバシーの問題もある」として「事業者名」のみを公表することで承認された。
 このほか、10月1日に評価制度をスタートするに当たって「メディアを通じて広く世間に向けて告知すべき」とされ、大タ協(坂本栄二会長)中心にPRに努めることになった。
 また、評価制度を「業界全体の底上げ」につなげていくためにも「『優良乗り場』は何としても必要」だとして、今後、「地域協議会」の名前でJR西日本や大阪市など、各土地管理者に向けて「要望を上げていくべき」とされた。
〔8月24日号関西版掲載〕 <Topへもどる>

2019年8月24日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】法人の優良事業者94社/10月開始へ評価委 大阪市域、全事業者の54%
【 大阪 】悪質事業者排除の仕組みを/評価制度の一方で提唱
【 大阪 】新運賃、評価制度等のPR戦略/大タ協が意見集約へ
【 大阪 】大阪府警が大タ協に感謝状/G20の交通規制協力で
【 京都 】副理事長、専務理事が辞任/全京 後任は未定
【 和歌山 】和タ協が共通乗車券/経営委員会で販売計画
【 神戸 】「接客コンテスト」今年度も休止/兵タ協 マナー研修など検討へ
神戸 】サバイバル補助に係る計画を協議/兵庫県福祉タク導入協 30日開催
【 神戸 】9月6日に運賃説明会/兵タ協 県下全事業者対象に
【 奈良 】「タクシーカタログ」でPR/「仕事フェスタ」参加の奈タ協
【 京都 】日交、アオイ自動車が出展/30日の合同企業説明会
【 大阪 】キャッシュレスのポイント還元/タクシー側からのアピールは?
【 大阪 】「尼崎城」のPRに協力/東阪神タク協組がステッカーなど
【 大阪 】全大個 26日に認可状授与式
【 大阪 】関中G20両→珊瑚自、認可
【 大津 】共立タクシー 役員変更届
 
2019年8月23日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】健康起因が前年の1.4倍に/近運局 事業用自動車等の事故概要2018
【 神戸 】新神戸に「UD専用乗り場」/中・小型統合で10月設置へ
【 大阪 】阿倍野区の病院に呼出電話/大阪無線が新設承認、287台に
【 和歌山 】希望制でPayPay導入へ/和個協がキャッシュレス説明会
【 大阪 】入構ゲートの機械買い替え/関空運営協が定例理事会
【 京都 】ICOM京都大会に協賛/弥栄自動車&ヤサカ観光バス
【 大阪 】北新地街頭指導、トラブルなく
【 大阪 】公共交通網形成計画へ3年計画/池田市の地域公共交通会議
【 大阪 】運転席後ろに案内パンフ/乗務員募集で近鉄タク
【 神戸 】IT点呼「営業所間でも」/管理職も人員不足で要望
【 和歌山 】ねんりんピック和歌山に期待/県輸送協議会で乗り場説明会
【 神戸 】兵陸部、労働局に要請行動へ/兵庫交運労協ハイタク部会
【 東京・大阪 】「めちゃ冷えタクシー」無料運行/DeNA 大阪で期間限定
【 大阪 】大阪で安マネセミナー/近運局 10月3日に開催
 
2019年8月21日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪他 】大阪は時間額964円に/近畿の最賃審答申、兵庫、和歌山は「目安」超え
【 大阪 】26日から決済機取り付けへ/関協のキャッシュレス対応にめど
【 大阪・和歌山 】どうなる? 大阪、和歌山の新運賃/「まだ審査中」公示後の動きも注視
【 京都 】「準会員」等に個人側反発/京タ協・業務C統合協議、難航
【 大阪 】キャッシュレス還元事業/DeNA説明会に約30社
【 京都 】秋の観光シーズン前に/京都市が交通対策研究会
【 京都 】乗務員アプリと決済タブレット/ユニオン JpnTaxi導入
【 大阪 】「ジャパンタクシー」導入/大タクセン UD研修にも活用
【 神戸 】配車アプリで若年乗務員採用も
【 大阪 】「観光特化」で生き残り?/個タク協組幹部が将来展望
【 大阪・神戸 】屋号を「塚口タクシー」に/日本城Gが買収のアロハタクシー
【 大阪 】霊感タクシー〜霊輪の呪縛編/未来都が 期間限定運行中
【 大阪 】6800円券の販売終了へ/阪急タク「乗車券プレミアム」
【 大津 】滋タ協 29日にアプリ説明会
【 神戸 】兵個協が理事会開く
【 神戸 】迎車回送料金の認可申請/大成交通、協組経由除いて
【 大阪 】東洋30両→東京・日交、認可
【 大阪 】泉州でタクシー新規許可
【 大阪 】TUNIU JPN、住所変更届
【 大阪 】近運局 3社車停処分
 
2019年8月9日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】申請は対象175社中110社/大阪市域の優良事業者等評価制度
【 京都 】統合による組織強化に期待/タクシー業務センター・総会
【 神戸 】「やぶくる」月間利用25〜26人/全自交関西が現地視察と懇談
【 大阪 】JpnTaxiの決済タブレット/オービーシーG、今月中全車に
【 奈良 】視覚障害者の要望聴く/奈タ協が意見交換会
【 大阪 】マイクロバス→タクシー/四条畷市がコミュバス見直し
【 京都 】京タ協がセクハラ研修会
【 大阪 】「プレミアム付商品券」対策を/値上げによる利用離れに備え
【 大津 】滋タ協 車両資材委員長に田畑氏
【 大阪 】関中Gの「1.4キロ540円」貫徹/壽タク・浦木山氏「当局の対応注視」
【 神戸 】須磨NTハイタク協、会費値下げ
【 奈良 】深吉野の4神社巡り/奈良近鉄が定額タク運行
 
2019年8月7日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】新システムで即時配車/福祉タク配車センター、全福協大阪支部が説明会
【 大阪 】ラジオ大阪で特番「タクの日特集」/大タ協、府下7カ所でPRうちわ
【 大阪 】女性部会は難波でPR
【 神戸 】県下全地区でキャンペーン/兵タ協「必要とされるタクシーに」
【 奈良 】JR・近鉄奈良駅前で/奈タ協「タクの日」PR
【 和歌山 】県下主要乗り場13カ所と車内で/和タ協「タクの日」記念イベント
【 和歌山 】和ハ協は「フリーザ―パック」/ラジオ2番組でもPR
【 大阪 】MOV決済器導入の最終確認/交友会が特別委員会
【 奈良 】QRコード決済、順調に/奈良業界 奈良近鉄も全車導入
【 大阪 】「近距離」「小型」「中型」統合/新大阪乗り場 9月5日に説明会
【 大阪 】新決済システムと譲渡譲受円滑化/全大個協組が説明会
【 京都 】観光ドライバーと学生がパネル/京タ協フェア、人手不足など話題
【 大阪 】自宅前に面接会場が出現/未来都、「車内で気軽に面接」
【 大阪 】11月試験へ譲渡譲受講習会/近畿個タク経営者学校で開講式
【 奈良 】視覚障害者団体と懇談/要請受け奈タ協、8日に
【 奈良 】奈良近鉄、2両目の「ヤクルトタク」
【 大阪 】全自交関西地連が活動家学習会
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