キャッシュレス後進国
　キャッシュレスとは「現金を使わない電子的な支払い」。例えばクレジットカードであったり、ＩＣカードであったり、あるいはＱＲコードというのもキャッシュレス決済の一つで、これらは事業者にとってさまざまなメリットがあると考えられています。まず、現金取り扱い時間の短縮などによる人手不足対策。また現金の搬出入回数減少による手間・トラブルの回避や売上管理の容易さ。
　さらには、この先ラグビーＷ杯や東京五輪・パラリンピックも開催されるなど、ますます訪日外国人観光客の数は増えてくると思いますが、そうした状況下にもかかわらず、先進国の中でもキャッシュレス化が遅れていると言われている日本。数年前のデータですが、最下位はドイツの15％で、それに続くのが日本で、キャッシュレスの普及率は20％。逆にお隣りの中国、韓国などは非常に進んでおり、中国では60％、韓国では89％の普及率とされています。こうした点で考えてみても、これからどんどん増えるインバウンド需要を取り込むにもこのキャッシュレス決済、キャッシュレス化というのは非常に有用な手段と言えるのではないでしょうか。
　加えてタクシー事業者にとって大変なのは毎日のお釣りの用意。例えば、１万円でお釣りを催促されて困ってしまったという経験をお持ちの方もたくさんいらっしゃることかと思いますが、キャッシュレス決済の場合はお釣りの準備自体がいらないし、車上荒らしなどに狙われる心配もなくなるでしょう。
　一方で、消費者側についてはどのようなメリットが考えられるか。財布を持ち歩かなくてもクレジットカード１枚やスマホ１台で買い物などが可能になってくる。また、データの利活用により利便性が向上（自動家計簿など消費履歴情報の管理が容易）する。さらにはカードの紛失・盗難時でも電話一本で利用停止もできますし、不正利用があっても契約条件によっては全額保証され、そういう意味では被害リスクも低いと言えます。

さまざまなキャッシュレス決済
　そんないろんなメリットが考えられるキャッシュレス決済ですが、その種類もさまざま。ひとつには前払い方式（プリペイド）。いわゆる電子マネーと言われるものでＡＥＯＮやｎａｎａｃｏのカードなどのほか、ＩＣＯＣＡなどの交通系ＩＣカードもあります。
　また即時払い（リアルタイムペイメント）ではデビットカードのほかモバイルウォレット（スマホや携帯電話一台で支払いが完了するタイプ）があり、これについては、バーコードの進化系である「ＱＲコード」を利用者に読み取っていただき、料金（運賃）を決済してもらうシステムですが、ひとつには乗務員がタブレットを使い、決済時、料金を打ち込みその分のＱＲコードをタブレット上で作成。それを読み取ってもらうことで会計を終了させるというもの。これは料金を打ち込むたびに毎回違ったＱＲコードが表示（動的・Ｄｙｎａｍｉｃ）されるので不正を起こしにくいという利点があります。また紙に印字されているＱＲコードを利用者に読み取ってもらい、その上で料金を決済してもらうもの（静的・Ｓｔａｔｉｃ）もあり、こちらはタブレットなどを必要としないので導入費用も安いというメリットがあります。さらには利用者側がＱＲコードを提示し決済するものもあり、モバイルウォレットについては、大きく分けてこの３パターンが主流になっているようです。
　このほかにも後払い（ポストペイ）があり、これはいわゆるクレジットカード（国際ブランド、銀行系、信販系）による支払いで、皆様方にとっておそらく一番なじみ深いものだと思います。

「需要平準化対策」の一つ
　しかし、そもそも何でキャッシュレス・消費者還元事業などが始まるのか―。皆様、今年10月１日から消費税率が引上げられるということはご存じだと思いますが、今回はその消費増税を行うに当たり「できる限り困った現象をなくしたい」という目的で、このキャッシュレス・消費者還元事業が行われるのです。
　少し思い出していただきたいのですが、過去数十年間、消費税ができて３％から５％、さらには８％と税率は引上げられてきました。その間、増税前と増税後にどのような現象が起こったか―そうです。買い溜めそして買い控えです。こうした波をできる限りなくしていきたいということで、今回「需要平準化対策」の一つとして打ち出されてきたのがこのキャッシュレス・消費者還元事業なのです。
　ですから実施期間は、増税となる10月１日から東京五輪・パラリンピック直前の20年６月末までの９カ月間。手続きについては、まずキャッシュレス決済事業者を１社でも良いし、複数社でも良いし、とにかく皆様方に選んでいただき、登録をしてもらう。登録ができましたら今度は決済事業者の方から皆様方に決済手段の提供（決済端末など）が行われ、10月１日を迎えることになります。そうなると次は利用者とのやり取りに移り、お客様がタクシーに乗車され、運賃をクレジットなどのキャッシュレス決済手段を使って行った場合、今度は決済事業者からお客様に向けて消費者還元が行われるというのが、この事業の主な流れとなっています。
　消費者還元には３つあり、�@消費者還元５％（フランチャイズ店の場合は２％還元）�A加盟店手数料率約２％台以下�B中小企業の負担ゼロで決済端末導入（３分の１を決済事業者が、残り３分の２を国が補助）―といった内容になっています。
駆け足でしたが、少しでも皆様方にキャッシュレス・消費者還元事業についてご理解いただけたら幸いです。いまお聞きいただいて分からないことがあれば、ポイント還元窓口（中小・小規模事業者向け）に詳しい者が常駐していますので、ぜひお電話下さい（電話0570−000655、ＩＰ電話等用042−303−4203、平日午前10時〜午後６時）。