【 大阪 】大タ協（三野文男会長）は８日の理事会で懸案だった２億円横領事件の弁済問題について、総額5000万円を執行部と監事、薬師寺薫・最高顧問らが埋める形で２年間の議論に終止符を打った。個々の支払額は三野会長が1700万円、４人の副会長が各300万円、足立堅治・専務理事が700万円、井田信雄・常務理事が300万円、足立博司・常務理事が100万円、３人の監事が各25万円、元経理部長（服役中）の不動産売却分の一部525万円、薬師寺氏が400万円。出席理事36人の投票により、賛成31、反対４、棄権１で提案通り可決した。今月21日の定時総会で任期満了を迎えることから、現執行部としては同日が実質的に最後の理事会となる。
　冒頭、三野氏は「次期執行部がフットワークよろしくスタートを切って大阪タクシー業界に山積している課題に果敢に取り組んでもらいたいとの思いであるので、私は残り少ない時間であるが目一杯務めてまいりたい」とあいさつした後、一昨日の全タク連正副会長会議を体調不良のため初めて欠席してまでも、この日の理事会準備に当てたことを明かした。
　その上で「横領事件解決の端緒を見つけたい思い」から２日、単独で薬師寺氏と会い、「論争は尽くされているので最終的な解決策を２人で提案したい。ノーサイドにしよう」「21日の通常総会では執行部体制も変わることになるから横領事件については解決しておきたい」と前置きし、具体的な話をしたことを報告した。
　三野氏は「最高顧問と会長が寄付を出し合って解決したい」とし、自身の寄付について、執行部提案の道義的責任額700万円を倍増し1400万円を申し出た。薬師寺氏は副会長の300万円の増額を中心に話したが、三野氏が単独で最高顧問を訪問している趣旨は、執行部案に自身と最高顧問の自発的寄付を加えて総会までに解決を目指すことであり、副会長分の増額はありえないと反対し、会談を終えた。その後、薬師寺氏からファクスが届き、短時間で電話のやりとりをした結果、両者の提案の差が325万円になったと報告した。
　薬師寺氏は、「坂本篤紀理事とのやり取りでお互い400万円払おうとの話があった。会長がプラス700万円というのは、会長ではなく私が言った。極秘会談を会長がばらしてしまったからすべてを話さないといけないと思う」と前置きし、「職員の退職金だけは確保しないといけない」との考えを基に責任ある副会長が300万円で理事の坂本氏が400万円では合わない、最低副会長も同額にすべきだなどと提案したが、会長が正しく報告しなかったため、いったんは取り消すとし、新しい執行部に持ち越すべきではないかとした。
　三野氏は、別室で今後の進め方を協議し、その間通常の議事は坂本栄二副会長に議長を任せ進めていただくと提案、了承された。坂本篤紀理事は２人の案で325万円の差があり、自身の負担が入っていないなら自身がその分を埋めて解決したいと述べたが、三野氏は「そういう話に入る前に最高顧問と確認したい」とした。
　約45分間の詰めの協議の結果、退職給与引当金に近づけた5000万円を総額とし、三野会長がさらに300万円追加した案を示した。薬師寺氏は「池田（元経理部長）分は弁償でもなんでもない。われわれは責任ある人がどういう弁償をするかということをこの２年議論してきた。利害関係人は参加できないという弁護士発言もあり、会長が提案することも後日それに抵触するという定款上の問題もあることも踏まえて採決をするなり、しないなり決めていただきたい」と意見を述べた。
　賛否を問うた結果、提案通り可決された。三野氏は、職員の退職給与引当金にさらに近づけるため、自発的な寄付の申し出は受けると付け加えた。２年にわたって議論が続けられた横領事件の責任弁済問題は、総会目前に急転直下解決を見ることになった。

〜薬師寺氏　三野会長の決意を評価
　薬師寺氏は理事会終了後、本紙記者に「１年以上、（自己の道義的責任弁済額は）700万円（との姿勢）を続けていた会長が1700万円、協会に弁済することになったのは大変な驚きではないか。700万円を１年以上引っ張ってきたあの三野会長が２、３日のうちに1700万円の弁済を決意したことは、定款との整合性は協会として問題はあるとしても、大変評価すべきことだ」とコメントした。（高原）
〔６月９日号関西版掲載〕　<Topへもどる>