５年先の自動運転視野に、対応急げ
　　　　　ライドシェアの調査・研究要請〜産業競争力会議で三木谷氏
　５月19日開催の政府の産業競争力会議（議長＝安倍晋三首相）の議事録がこのほど、内閣府から公表された。それによると民間議員の一人として出席した楽天の三木谷浩史・会長兼社長がシェアリングエコノミーの推進に当たって民泊とライドシェアについて具体的な注文を付け、特にライドシェアについては解禁合法化に対してさまざまな政治的力学が働いていることを承知しているとした上で、自動運転時代の到来を自明の前提として早急に調査・検討を開始するよう求めていることが分かった。
　５月19日の産業競争力会議は、日本再興戦略2016素案（成長戦略改訂版）が議題。内閣府が提示した素案をもとに民間議員らが中心に議論を繰り広げている。この中で三木谷氏はシェアリングエコノミーの推進を訴えるとともに、その内容として民泊とライドシェアをあげ、民泊については「かなりいい形で進んでいるようだ」と評価。一方、ライドシェアについては自動車の完全自動運転時代が近づいていることを強調し、「米・テスラではすでに高速道路では基本的に自動運転になっているということであり、10年先、20年先という話ではない。５年くらい先には、自動運転が広く実現してしまうのではないかと思っている。中国ではライドシェアナンバーワンのディ・ディという会社が１日500万台ライド以上を実現している。すでにクルマは保有するものではなくて、サービスをするものであると変わってきている。これが世界の常識だと思っている」と主張。また、「ライドシェアについてはいろんな力学が働いていることは承知している」とした上で、「来たるべき自動運転の時代に備えて、また、クルマは保有からシェアする時代ということを考えて、日本も積極的にどういう制度設計をしたらいいかということについて、調査・検討を開始していただきたい」と要請した。
　竹中平蔵・慶應義塾大学名誉教授はこれに同調し、「アベノミクスの考え方は100％理論的に正しいし、着実に成果は現れている」とした上で、「民泊、ライドシェア等々については、三木谷さんがおっしゃったことが正論だと思う。その線で進めていただきたい」との考えを示した。

公道上の自動運転実証実験　〜警察庁がガイドライン〜
　警察庁は５月26日、自動走行システムの実証実験を公道上で行うためのガイドラインを策定した。実験は現行の道路交通法、道路運送車両法の規定に適合した車両を用い、当該実験車両に対応した運転免許を取得し相応の運転経験を要するドライバーが乗車すること―などとしている。
　ガイドラインによる公道実証実験の基本的な制度の枠組みは、�@公道実証実験に用いる車両は道路運送車両の保安基準に適合していること�A運転者が実験車両の運転席に乗車して、常に周囲の道路交通状況や車両の状態を監視（モニター）し、緊急時には、他人に危害を及ぼさないよう安全を確保するために必要な操作を行うこと�B道交法をはじめとする関係法令を順守して走行すること―とし、これらの条件を満たす限り、場所、時間にかかわらず公道実証実験を行うことは可能だとしている。
ＧＬにはこのほか、実験の実施主体の責務、安全確保措置、テストドライバーの要件、実験車両にかかわるデータ等の記録、保存、交通事故の際の措置、賠償能力や関係機関に対する事前連絡などを規定している。

県下15市町で自動運転の実証実験
　　　　　　　　〜愛知県　４市町で自動運転タクシーの体験乗車も
　愛知県は昨年８月、近未来技術実証の国家戦略特区における自動車の自動走行実証プロジェクトの実施地域としての指定を受け、これまで企業や大学が行う自動走行の実証実験を支援してきた。
　大村秀章知事が５月30日の会見と自身のツイッターで明らかにしたところによると、今後同県ではその取り組みをさらにステップアップ。企業や大学と連携の下、自動走行に必要な精度の高い３Ｄマップを作成した上で、山間地、離島など、道路や周辺環境等が異なる県内15市町で自動運転の実証実験を行うという。また、無人タクシーを疑似体験できるアプリも作成し、あま市（名鉄七宝駅〜七宝焼アートヴィレッジ）や幸田町（ＪＲ相見駅〜永野ちびっこ広場）などの４市町では県民をモニターに自動運転タクシーの体験乗車会（走行状況等を確認するためドライバー同乗）も計画。「この先も市町村や企業と連携し、自動走行の実証実験フィールドの整備などに積極的に取り組んでいく」との決意を示している。

大阪で77歳の運転者が死亡事故
　　　　　〜５人に１人が70歳以上、止まらぬ高齢化と自動運転への期待
　自動走行システムに関する警察庁のアンケート調査では、回答者の74％が交通事故の削減に期待を寄せている。「安心・安全」は、タクシー業界が白タク・ライドシェアの解禁阻止を訴える際のキーワードだが、残念ながらタクシーによる死亡事故は著しく減少とはいかず、運転者全体の高齢化もあり、高齢運転者による事故が目立つ結果となっている。
　５月29日午前８時頃、大阪市北区曽根崎新地の国道２号線交差点内でタクシーとオートバイの衝突事故があり、オートバイを運転していた31歳の男性が死亡、法人タクシー運転者が大阪府警天満署に自動車運転処罰法（過失致死）の疑いで逮捕された。運転者は「横からオートバイが飛び出してきた」と供述しているというが、報道された77歳という年齢から、改めてタクシー運転者の高齢化がクローズアップされる結果となった。
　大阪タクシーセンターが１日に公表した５月末現在の運転者証等交付状況によると、法人・個人を合わせた運転者２万5006人（大阪府Ａ地域）のうち5021人が70歳以上で、全体に占める比率はすでに20％。法人運転者に限ってみても18.5％に達しており、さすがに75歳以上は4.5％にとどまるとはいうものの、実数で973人というのは相当な数で、40歳未満の576人、40代前半の796人を遥かに上回る。ライドシェアの危険性を指摘し、公共交通としての安全・安心を謳いながら、事故報道のたびに運転者の年齢が注目される事態が解消される見通しはない。
　そうした中で急速に進んでいるのが自動運転技術の研究開発だ。タクシー事業が様変わりするのは、そう遠い話ではないように思われる。
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