社会と共生しているタクシー無線
　坂本会長は５月27日、千代田区の全自無連本部で、岡崎邦春・専務理事とともに、本紙など専門紙の共同会見に臨んだ。
　この中で坂本会長は、「タクシーが公共交通機関として存在する意義はタクシー無線にある」とし、「阪神・淡路大震災や、先の東日本大震災でも通信手段の多くが断たれた中、スムーズに通信ができたのはタクシー無線だけという事実が示している。さまざまな形で被害を最小限度にくい止めることに役立ち、いざという時にタクシー無線が頼りになることが改めて証明された」と強調。さらに、「タクシー手配などを通じて犯防にも貢献し、地域のお守り役としての機能を発揮している。そうした意味で、（タクシー無線は）社会と共生している」とした。

低利融資制度も、改正適正化新法もタクシー無線があればこそ
　また、４月から発足した低利融資制度については、「私はタクシーの他にトラック、バスの事業を手掛けているが、タクシー事業の社会的意義は他の事業と比べてまったく異なっている。先に改正タクシー適正化新法が成立・施行された背景には、乗務員の労働条件を改善させるという狙いもあるが、私はタクシー無線が果たす社会的貢献への評価があったと思う。タクシー無線がなければ（改正新法の）施行はなかったとも言える。これは改正に取り組んだ現場の人間として実感として受け止めている」とし、さらに「タクシー無線などの電波は目に見えず、手にも届かない。それだけにいくら限られた資源だ、貴重な資源だと言われても分からないが、（デジタル化は）国策として取り組んでいるもので、それを利用している事業者としては有効に利用する義務がある。タクシー事業は営利を求める単なる私企業ではない。タクシー無線は社会と一体となって取り組んでいるからこそ、適正化新法の改正も認められた。低利融資制度もそうした社会貢献や、利用者のために取り組むタクシー事業が評価され、より効率化を目指すデジタル化に向けて低利で適用されることになった。ぜひとも積極的な活用をお願いしたい」と述べた。
　また、坂本氏は携帯ＩＰ無線について「無線の技術革新は目覚ましく、この分野は今後も新しいシステムが開発される可能性が高い。だからこそ、多くの投資が集まっている。スマートフォンなどの携帯ＩＰ無線システムが全国で普及しているが、タクシー無線とは違うものの、電波を利用する公益事業として同じ“家”の中に住む仲間だと捉えている。そのためには電波利用を営む事業者として一緒にまとまっていかなければならない。今総会では一体となろうと呼びかけるつもりだ」などと述べた。

委員10数人で組織化へ〜全国ＩＰ組織委
　今総会で正式発足する「全国ＩＰ組織委員会」は１月の理事会で設置を決め、総会承認後直ちに発足する。委員会メンバーなど人選を進めることになるが、各地方協会などから人選し、委員は合計10数人になる見込みという。携帯ＩＰ通信システムを運用中の事業者も参加の予定で、「同じ無線利用の仲間として（全自無連として）どのような支援ができるのか、現場の意見も反映させ、情報を共有化して検討していきたい」（岡崎・専務理事）とする。
なお、３月末の所会員事業者は全国4475社・16万1449局で、このうちＭＣＡ無線利用事業者（非会員含む）は245社・8002局、携帯ＩＰ無線利用事業者（同、２月末）は192社・１万3468局で、これは会員事業者数の2.5％、車両数で4.3％に当たる。

デジタル化完全移行に向けて〜低利融資制度利用で後押し
　全自無連によると、今年３月末のタクシー無線のデジタル化の進捗状況は全国10協会で2406社・12万4945局が完了。これは協会4775会員の58％となっている。残りは約2000社・約４万2000局だが、そのほとんどは保有40両以下の中小事業者という。ただ、平成28年５月末のデジタル化移行期限に合わせ、このところ導入事業者が増加しており、今年３月末のデジタル導入率は前年同期比29.6％に達した。これは消費増税、移行期限切れを控えて駆け込み導入が増加したためだが、全自無連の推計では残る２カ年間余りで事業者数で年30％以上の伸びを記録すればほぼ完全移行に近づく見込みという。
　そのための“販促ツール”が今年４月スタートの低融資制度で、全自無連では昨年11月から全国各地で同制度について説明会を開催し、制度の周知徹底に努めてきた。説明会はアナログ事業者、賛助会員などを対象に全国24カ所で開催、約800人超が出席した。また、支援制度活用のリーフレット8000枚とポスター80部を配布、広く利用を呼びかけている。
　４月から低利融資制度の窓口となる日本政策金融公庫などで照会・相談を受けつけているが、４月現在の融資件数は全国で１社という。ただし、貸付を受けた事業者名は公表されていない。
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