ハイヤー・タクシー業界専門情報紙  株式会社 交通界
2009年4月21日

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「週刊交通界21」毎月4回情報発信
タクシー再生へ「適正化新法」後の課題に取り組む
<対談>
 坂本克己氏(大阪タクシー協会会長)
 安部誠治氏(関西大学副学長)


 タクシー適正化新法の国会審議が迫り、タクシー政策が大きな転換期を迎えようとしている。『週刊交通界21』通算300号突破・特別企画第2弾として、昨年の交通政策審議会でも息のあったところをみせた大阪タクシー協会の坂本克己会長と、関西大学の安部誠治副学長に登場願った。規制緩和で焦土と化した大阪タクシー業界の再生に必要なものは何か。新法が積み残したいくつかの課題の中で最も大きな運賃問題について、国交省研究会に引き続き委員として参画して現場の実情を訴えることになる坂本会長と、業界の理論的支柱ともいえる安部教授の対談をお届けする。(進行:高原義之、4月6日収録)

―まず、坂本会長におかれては、大タ協の2期目の会長就任、おめでとうございます。1期目の2年間は、交政審ワーキンググループの専門委員としての活躍、昨年9月3日の3000人パレード、また、ほぼ同時期にあった低燃費LPG車両の購入助成についても、坂本会長の働きかけによって実現したということで、これらは業界労使から高く評価されているところです。
 本日は、交政審WGの臨時委員としても活躍された安部先生とご対談頂いて、新法の国会審議前の難しい時期ではありますが、とりわけ、この大阪業界がどう変わるか、新法がどういう形になろうと、混迷かつ低迷している大阪業界を浮上させるためにはどうしなければならないのか、事業者、労働界、行政、どこに働きかけをし、行動していかなければならないのか、という点に絞ってお話し頂ければと思います。
 さて、政府は2月10日にタクシー適正化新法を閣議決定して、法案が今国会に提出されているわけですが、業界が求めていた強制減車による需給調整、同一地域・同一運賃は盛り込まれていません。

緊急避難としての適正化新法
安部
 タクシーは台数と運賃が2つのポイントで、これをどうするかというのが最大の問題です。私は、交通研究者の中では、タクシー業界の実情を多少は把握している方だと思いますが、そういう目から見ると、同一地域・同一運賃の必要性はよく理解できます。世界の都市でも同一地域・同一運賃制のところが多く、これが望ましいと思っています。
 一方、利用者とか、あまり業界の実情をご存じない方からすると、「なぜタクシーが同一地域・同一運賃でなければならないのか。おかしいのではないか」という議論になるわけです。需給調整にしても、「事業者が勝手に増やしておいて、しんどくなったから強制減車して補助金まで出してくれというのは虫が良すぎる」「こういう不況のご時世で、もっとしんどい業界が一杯ある中、なぜタクシーだけ救済するのか」と言われたときに、なかなか反論しにくい部分があります。
 台数と運賃の2つが大問題というのは間違いないのですが、かといって、そのことでどこまで世論の支持を得ることができるかというと、なかなか難しい問題があって、結局、地域協議会を立ち上げるといった、需給調整のための土俵づくりという形の新法ということになった。道路運送法を直接改正して、法律的に運賃と台数の問題をクリアーするということにならなかった。それは、今後の課題として残っている、ということだろうと思います。
 大きな流れで言うと、規制緩和の前後から、とくに規制緩和を経て、都市部を中心に供給過剰が深刻になり、業界にモラルハザードも起こりはじめた。そこで、とりあえず水道の蛇口を少し締めようと、昨年7月の国交省の方針転換をも含めて、ハードルを少し元の高さにもどして、質の良い事業者しか入れないようにした。
 そういう緊急避難というか、大きな枠組みとしてはジャジャ漏れ状態は止まったが、バケツにはもう水が一杯溜まっているわけで、そこをどうするかというのは別の問題です。つまり、台数をどう減らしていくかというのは別の問題であり、次の課題です。それが新法の枠組みの中でどうなるのか。
 もうひとつ、運賃の問題で言うと、ダンピングに近い下限割れを放置すると、運賃競争によって業界が非常に疲弊します。それではまずいので、そこをどうするかというのが、運賃のガイドラインを策定するという作業につながっていきます。夏ごろまでに結論が出るということですが、本省が行うこの作業は極めて重要です。
坂本 先生のおっしゃる通り。これ以上悪くならないという一定の歯止めはできたけれども、問題はすでに供給過剰になっている現状をどうするかということ。何よりもドライバーの生活が成り立つようにしなければなりません。
―何はともあれ、規制緩和で最も変化したのは大阪で、その点を交政審でも坂本会長が主張されてきたわけです。良いふうに変化してくれたらいいのだけれど、悪いふうに変化した。適正化新法が成立したとして、台数と運賃の課題を残している中で、大阪業界がどう変わるかという点については、いかがでしょう。

いかに地域ごとに減車を進めるか
安部
 新法のひとつのポイントは、いかに地域ごとに減車を進めていくことができるのかということです。今までですと、業界が協調し、相談して減車などを実施するとしたら、独禁法に抵触したわけです(これまで業界が大規模な減車に取り組んだことなどありませんが)。新法の最大のミソは、新法が指定する供給過剰地域、これは特定特別監視地域とほぼ一致すると思いますが、その地域で業界が結束して減車の動きを進めたときに、独禁法問題で公取委は口を出さない、という枠組みをつくったという点です。
 具体的には、協議会が立ち上がって、その地域のタクシーの適正台数について議論が始まる。適正台数については、おそらく運輸局が案を示すと思いますが、それを基に協議会で議論して、減車しましょうという相談をしたときに、公取委はこれを問題にしないということになると思います。
 ですから、これはあくまで枠組みに過ぎません。たしか新垣(慶太)前近運局自交部長の発言だったと記憶していますが、「土俵は作りました。相撲を取るのは業界の皆さんですよ」という趣旨の発言をされた。そのとおりで、土俵ができただけなのです。それで相撲をどう取っていくかということになりますが、大阪業界では土俵に上がるのをいやがる人も出てくるでしょう。土俵に上がらない人をどうするか、いかにして土俵にあげるか。これはなかなか難しい問題です。

いかにして土俵にあげるか
坂本
 普通で済まないようにしなければ。行政といろいろ話し合いながらね。土俵の上に「上がらん得」は絶対に許さない仕組みを考えなければ。先日は、ワンコインタクシー協会から地域協議会に参加させてくれという話がありました。良いことですよ。堂々と土俵に上がって議論すれば良いわけで、いろんな人、地方自治体の関係者もおいでになる中で、企業理念と信念を語ればよい。それぞれの企業経営を、ポリシーを持ってやっておられるのだろうから、土俵に上がってこないのがおかしい。
 いろんな方がおいでになる中で、他の公共交通機関との整合性などもみながら、いかにタクシーという個別輸送機関を機能化するかという議論をしようというのだから、経営者なら堂々と入って来て、持論を述べてくれればよいのであって、入って来ないという方がおかしい。
安部 とくにタクシーは公共性が高く、安心・安全なサービスを担保しなければならないわけで、民間企業といえども、ある程度、公共的な制約は受けざるを得ない。地域協議会でタクシー問題を改善していこうというルールができるわけですから、そこに参画してもらうことが必要です。
 ただ、実際に参加しない事業者が出てきたときにどうするか。その事業者抜きで協議会が一定の結論を決めたときに、参加していない事業者を、その決定や結論にどう従わせるのかが最大の問題です。おそらく国会審議でも、ひとつの大きな論点になるでしょうね。
 東京のような、比較的、業界の大手がまとまっているところだと、協議会で計画を立てたとしても、それが実効性をもつと思います。しかし、大阪は東京ほど業界の結集力が強いわけではありませんから、1000両規模の有力な事業者が参加しないことも予想される。
坂本 国会で、当然、議論されるでしょう。
安部 これをクリアーしないと、地域協議会方式は機能しなくなってしまいます。地域の大半の有力事業者が参画するようにならないと、減車計画を立てたとしても、なかなか実効性のあるものにならないでしょう。国交省も新法の枠組みを作ったので、仮に参加しない有力事業者が出てきたときに、どういう行政的な働きかけをしていくのかということが、問われると思います。
坂本 政省令できっちりしましょうということになるでしょう。自分が理念、ポリシーを持って事業を展開しているのだろうから、堂々と出てきて持論を述べればいい。協会に加入している、していないに関係なく、正々堂々と理念を述べてほしい。そうすることで、おのずと解決の道筋もみえてくると思う。
―国会は今後の審議になりますが、政局との絡みで廃案、総選挙の結果で仕切り直しということもありますが…。
安部 もし仮に、5月の連休明けの解散となると、審議未了で廃案になります。廃案になると、原則、同じ案について審議はないから、国交省がもう一度法律案を作り直す必要があります。政局がどうなるのか、よくわかりませんが、新法については早く成立させた方がいい。最初に申し上げたように、すべてこれに期待するわけにいかず、限界のある法律ですが、少なくとも昨年1年間の交政審の議論を経て、新しい枠組みを作ろうということなので、これは早く成立させた方がいい。
坂本 そういうことです。
安部 ただ、仮に解散で廃案になったとしても、交政審の審議を踏まえて、国交省は新しい、組み替えた法案をすぐに出してくるとは思いますが。

「同一地域・同一運賃」の法制化は…
―一方、野党の民主党は道路運送法の改正案と新法の対案の2法案を国会に提出するということで、需給調整、運賃問題についても一歩踏み込んだ対応を模索しているようですが…。
安部 そうなればすばらしいことですが、同一地域・同一運賃を法制化して盛り込むというようなことが、本当にできるでしょうか。昭和26年の道運法の制定当時でさえ、できなかったわけで。
坂本 強制減車も含めて、憲法との絡みがありますからね。
安部 規制緩和以前の時代でさえ、同一地域・同一運賃は、昭和30年の自動車局長の通達という形、運用で行われたのですから。
坂本 先日、国交省の「運賃制度研究会」の初会合があって、山内弘隆座長や、立教大学の公正取引関係の専門の先生(舟田正之教授)がおられる中で、私が問題提起したのは、いわゆる営業の自由と公共の福祉の関係です。要するにバラバラ運賃が横行すると、公共の福祉にプラスにはならないと考えていますと。憲法上の営業の自由は分かりますが、片や公共の福祉というものがあって、これとの絡み合いの中で、安全を重視した場合、多重運賃というのは利用者に資することはないという概念は、歴としてあるでしょうという話をしていたのですがね。

共倒れを招かないGLに
 最高裁の判例の中に、公共性のある事業で、一部の業者、シェアが3%なり、5%なり、10%までいかなかったとしても、一部の業者が新しい需要を喚起するのでなく、同業他社のお客さんを横取りするということが蔓延しだすと共倒れするという、言葉を使っています。ということは、同じく公共性のあるタクシーが共倒れして存在できないということになれば、社会的に極めて大きな問題になるという話です。
 だから、ただ単に、ある事業者がそれなりの運賃のレベルで、@採算が合いますA安全を阻害することはありませんB快適輸送も保証できます―という方程式ができても、それによって他の事業者が適正な事業運営ができないということになれば、まず労働者の適正な賃金が確保できないということから現れてきます。あくまでも労働者が普通に働いて、普通に生活できるというところがガイドラインですよ、ということを、声を大にして言っています。
―研究会は、ガイドラインの策定と、道運法の9条の3第2項3号の「不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること」の明確化を議論することになっていますね。
坂本 そう。民主党は、この「不当な競争を引き起こす」云々の項目自体が多重運賃を是認しているというので、この部分を抹消するとも言っています。最終的にどうなるか分かりませんが、問題のポイントであることは間違いない。
 しかし、内閣法制局と衆参の法制局に格差があるらしく、民主党としても衆参の法制局と話をしていても、なかなか前に進まないとも聞いています。
安部 そのように言われていますが、民主党は衆参の法制局の方で協議しているのですか。
坂本 そのようですよ。
安部 「同一地域・同一運賃」が盛り込まれれば結構なことですが、最終的に民主党案となるかどうかは不透明ですね。
坂本 交政審で安部先生からも主張して頂いたように、消費者利益、つまり利便性と安全確保を考えれば、流しタクシーは同一運賃、付加価値がつくハイヤーのようなものは比較的フリーな運賃・料金体系でいいのではないかということで、基本的には理解されたと思います。民主党が一歩踏み込んでやれるか、やれないか。
―業界には期待を持たせてくれていますがね。
安部 はっきりしているのは、政府提案の新法には今のところ運賃問題は入っていないので、今の枠組みの中では国会審議の過程で大きくそこの部分が修正されるとは思えません。業界としては、運賃の問題で何とか法的な手がかりを得たいので、民主党案への期待が大きいということなのでしょうね。ただ、民主党がその期待に応えて、果たしてそういう法案提出ができるかどうかは、よく分かりません。

悪質事業者を退出させるには
―国交省は昨年来、名義貸しの判断基準や、7.11通達などで、実質的に規制強化策を打ち出していますが、新法の施行に至るまでの間に、業界の自助努力で適正化を進める方法はあるでしょうか。また、悪質事業者の跋扈を封じる方策について、どのようにお考えでしょう。
安部 悪質事業者をどうするかというのは、交政審のひとつのテーマではあったのですが、「メリハリの効いた監査を実施する」という以上のことは出ていません。7.11通達にしても、名義貸しの判断基準にしても、「今後は入れません」というもので、すでに入っているものに対してどうか、というのはなかなか難しい。
 私が一番危惧しているのは、ルールを破ったり、おいしいところ取りをする事業者が存在することで、まともな事業運営をしている事業者の気分を萎えさせていることです。「あんなことも許されるのか」ということで、キチンとやることがあほらしくなると、業界全体のレベルが低下する。みかん箱の中のみかんが1個腐ると、周りがだんだん腐ってきます。やはり、問題のある事業者は早く退出させる仕組みをつくっておかないと、業界全体に悪い影響を与えます。
 しかし、現実には、これがなかなか難しい。監査強化もひとつの方法ですが、例えば、大阪でいうと、タクシーセンターのスタッフが夜、キタとミナミで指導をしていますが、一時的な効果はあっても、なかなか難しい。決定打があるわけではないので、運輸局にも頑張ってもらって、着実に対応していくしかない。
 それと、個人タクシーの一部にも問題があります。協会に入っていない個タクの場合、サービスの質の担保が非常に難しい。法人の場合、大半の事業者は乗務員管理をきちっとしていますが、数は少ないが問題のある事業者もいます。個タクにせよ、法人にせよ、一部が非常に質が悪い。しかし、これを改善していかないと、だんだんと業界全体の質の低下につながりかねません。
 ただ、会長、難しいでしょう。業界でやるとしても。
坂本 何をもって悪貨と称するかというところから始まって、言わず語らず、これは最大・最高の問題です。泥水をいかにして外に放り出すかということ。「正直者が馬鹿を見る」「悪貨が良貨を駆逐する」。「悪貨=不正直者」ということが、ようやく理解されつつありますが…。
安部 とりあえず、この名義貸しとか7.11通達で、質の劣るものは新たに入れないという、一定の歯止めができたのは事実で、これだけでも前進です。これがなければ、その後もどんどん入って来ていたでしょう。
坂本 その通りです。そこで大事なのが、これから特定地域に設けられる協議会です。どんなことがあっても安部先生に入ってもらわなければ。

ランク評価制の難しさ
―悪質事業者の問題にも絡みますが、近運局がランク評価制度を提案しています。この点については、いかがでしょう。
安部 どうなのでしょう、タクシーの場合、ランク制を設けても、消費者が選択できるかどうか。国交省には「消費者が選択できるシステムを」というのが一貫した流れとしてあって、その中で何かつくりたいというのは分かるのですが、遠くから走ってくる流しのタクシーを手をあげて停めて、「このタクシー会社はダメだから、乗らない」ということにはなりにくい。事前に予約して、自宅に呼ぶというところにはランク制が入ることによって選択性が効きますが、流しだとか駅待ちで、本当に選択が効くかというと…。やらないよりも、やった方が良いでしょうが、このことで大きな期待はしない方がよいのではないかと思います。
 東京で優良タクシーの乗り場を分けていますが、乗客が優良タクシーの方に行くかというと、そうでもなく、もうひとつ成果はあがっていないようですね。
 業界としては、どうですか?
坂本 言葉としてはよく分かるのですが、実際問題としては極めて難しい。「100−1=0」ということを社内で話しています。100人のドライバーがいて、1人でも不良な対応、接待をするドライバーがいれば、99人がいくら良くても、日本タクシー全体のブランドとしてイメージが落ちてしまう、そういう側面があります。
安部 利用者が、たまたま100分の1の確率で悪いドライバーに当たっても、その利用者にしてみれば、タクシー全体が悪いことになる。今、学生の就職活動が本格化しています。「就職率98%」とか「就職率99%」とか、よく大学側は言うわけですが、就職が決まらなかった学生や親にしてみれば「就職率0%」です。
坂本 そうそう、そういう話です。
安部 この間の流れで、一方で消費者の選択を高めるような仕組みを考えろと言われているわけで、国交省もやらざるを得ない。国交省には申し訳ありませんが、ないよりは、あった方が良いという施策だと思います。ランク制を入れても、流しで本当に選択性が効くかということです。
―景気減速の影響で、もともと厳しい大阪の営収は、さらに厳しくなっていますが、タクシーの需要創造の秘策ということではいかがでしょう。
坂本 われわれは企業、事業経営者ですから、新たな需要開拓はたゆまず努力しなければなりません。当然の責務であり、事業者としての宿命です。需要創造、新しいお客さんを呼び込む、囲い込むというのは、業界全体もそうだし、各事業者の経営の根幹です。その秘策と言われても…。
安部 ありませんよね。

公正な競争環境でなければ
坂本
 ないけれどもやる、と。介護タクシーしかり、子育てタクシーしかり、乗合タクシー、観光タクシーと、業界全体でも、各事業者でも、いろいろメニューはつくっていく。ただ、申し上げているのは、不正競争、不当競争は困るということを社会にアピールしたい。
安部 そのとおりです。公正な競争が大前提です。そこが崩れている。
坂本 需要創造のために、当然かけなければならない経営コストというのがあります。労働集約産業で、主役であるドライバーに経営コスト、経営リスクを負担せしめるのはいかがなものか、ということ。そういうことがあります。
 創意工夫や新しい需要を生み出すような、新しい事業者には入ってきてほしい。そういう意欲を持った方に。本来は、それがための法改正であり、規制緩和であったはずです。適者生存、良い意味での優勝劣敗につながると期待したものが、単なる安売りだけが入ってきたというのが、大阪の悲劇です。
―そうした、規制緩和の反省も含めて、交政審の議論があり、適正化新法の提出につながったわけですが、交政審の“宿題”への対応という意味合いもあって、「賃金」「運賃」「選択性」に係わる国交省の検討組織が設置されました。

運賃GLの策定を早く
安部
 とくに重要なのが、運賃のガイドラインを策定する国交省の検討会です。
―坂本会長が、参加されています。
坂本 1日の初会合は顔合わせで、本格的な議論は次回からです。先に先生にご相談申し上げたいと思っています。
安部 「賃金」「選択性」の検討会の方は、テーマからして少し時間もかかるでしょう。ところが、運賃のガイドラインは新法が通ったとして、現行法案では地域協議会は運賃問題を扱わないことになっていますが、私は扱った方が良いと思っています。「その他、地域のタクシーを良くするため」という項目がありますから、扱えないことはない。早く国交省がガイドラインをつくって、それに基づいて、できるところは地域で運賃の議論を始めたらいいと思います。だからこの検討会は非常に大事です。
坂本 あくまでも労働者の生活確保ですよ。ドライバーの生活が成り立たないわけですから。
―それと関連しますが、全自交大阪地連が支援した国賠訴訟で、原告適格が認められずに門前払いの判決が出ました。その結果については、どうお考えですか。

現状無視した大阪地裁判決
安部 原告適格の有無は裁判所の判断です。私は異論がありますが、それはそれとして、問題なのは判決文の中の裁判所の現状認識の部分です。「大阪は過当競争状態にはない」「ドライバーの労働条件も低下していない」という主旨のことを述べています。いくらなんでもそれは無いでしょう、と言いたい。規制緩和前後から明らかにドライバーの労働条件は悪くなっています。それを認めないというのは、現実をきちんと見ていないわけで、非常に問題であり、適切とは思われません。原告適格の点は、道路運送法の解釈で難しい部分があって、解釈が分かれると思いますが、現状の認識は明らかに間違っています。
坂本 労働者の側からみれば、けしからんですよ。徹底的にやらねばということで、控訴するということになると思う。
―一方、札幌でエムケイの進出を巡って訴訟になっています。こちらは「原告適格あり」ということになるでしょうが。
安部 事業者がやれば、原告適格が認められる可能性もあります。問題は、道運法の解釈でどうなるか。本格的な運賃論争が法廷の場で展開されることになるでしょう。
坂本 (エムケイの)経営実態が露になりますね。良い機会だと思います。一石を投じたという意義は大きいでしょう。
―本日は、有り難うございました。

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No302. 2009年4月20日号 ニュースヘッドライン
人物:矢田 淑雄 氏/東京運輸支局長
気になる数字: 38.8% 10年前には50.4%だったハイタク労組の組織率が…
トピックス: <対談>大タ協・坂本克己会長☆関西大・安部誠治副学長
      : 「同一運賃」へ事業者が提訴を 全自交大阪地連・森田貫二委員長
      : 持続可能なタクシーサービスを 近畿運輸局・長井総和 自動車交通部長
      : 民主党☆タクシー関連2法案 政府案の国会審議を前に詳細を吟味
      : 希望形状、着脱1分でOK 話題の防犯仕切り板 〜エムプラチック
シャッターチャンス評価の高まり?は業況悪化の証/コスト置き去りで現場は踊れず
             : こちらは「笛吹けど踊らず」/高齢化止まずに存続の危機!
この人/この言葉 :川野 繁氏/高城 政利氏/金子 誠二氏/石井 一博氏
東西往来 : “偽装着用”に注意/大きく育て「子育てタクシー」
その他 :<ほっとコラム> 政栄 p生氏
      :<好評連載・大阪タクシー産業盛衰記> 増田 和幸氏に聞く
      :<別刷・特別付録> 交通事件で娘を奪われて ― 事故防止責任者講習会の講演から ―
Faxpress 関東版
「協議会」に向けて自治体行脚 〜タクシー再生のプロセスへ
  関運局「消極的な反応ない」
【横浜】関東運輸局の福本秀爾局長、小林豊・自動車交通部長、石橋廣・自動車監査指導部長ら幹部は15日、定例記者会見を開いた。この中で小林・自交部長は仕組みを見直した法人タクシーランク評価制度の定着に改めて意欲を示し「加点評価の導入・強化で新しい価値観も組み込まれた。利用者にも説明しやすく、積極的にアピールしてほしい」などと述べたほか、タクシー適正化新法施行後の地域における協議会開催に向けて、同部長自身が管内各都県を訪問していることを明らかにし「消極的な反応はない」と強調した。
 福本局長は会見の冒頭、「タクシー適正化新法は週明けにも国会での審議に入る。国会情勢もひと頃と違い、与野党あげて『必要な法律は通す』という空気だと思う。新法のようにタクシーを地域の中で捉えていくことは初めての試みであり、われわれは事務方としてしっかり支えていきたい」と強調した。
 法人ランク制度について小林部長は、「本省としてのタクシー利用者選択性向上の方策もあり、同省検討委での論議を通じ、交政審答申の精神を活かしてどう全国展開を図るかだ」とした上で、「当局としても、これまでランク制度が十分に浸透してこなかったこと、事業者が必ずしも支持していなかったことは承知しているが、今回の評価の仕組み見直しで加点制度も強化され、新しい価値観が入った。利用者にも説明がしやすく、事業者の皆さんには積極的にアピールしてほしい」と述べ、グリーン経営認証、優良乗務員表彰による加点評価の効果に期待を寄せた。その上で、「優良乗務員表彰制度、優良乗務員乗り場の拡大、法人ランク制度の3者を合わせて、より良いタクシーが選択されていくようにしたい」と意欲を見せた。管内では、都内以外の地域でのランク評価制度導入についても「広い意味で業界の声は聞いている」としたものの「タクシーセンターの有無など課題もある」とするに止めた。
 一方、新法施行後の地域協議会の開催準備に向けて小林部長は、「いくつかの都県の関係部署と接触を始めている」とし、「これまで自治体としてどうタクシーに係わり、これからどう係わろうとしているのか、意見も聞いている」「幸いにして『タクシーには関心がない』という反応はなかったが、具体的な係わり方のイメージはできていないようだ。しかし、公共交通機関のプレイヤーとしての認識はあると思う」と述べた。福本局長も「情報格差があったのは事実だが、これから問題意識を深めてもらい、タクシー再生のプロセスに入っていく」と強調した。銀座乗禁地区の乗り場配置見直しについて小林部長は、「あくまで対外的に必要な調整を行っている段階で、最終的な姿を示せるのはもう少し先」と強調した。
 石橋・監指部長は平成20年度のタクシー関係監査件数について「概数で480件になる。19年度の460件に比べ、4%程度の増加だった」としたほか、「指摘事項としては依然として、過労防止、指導教育、点呼関係が多い」と述べた。
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2009年4月18日 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】「仕切り板」で事業者アンケート/東旅協環境・車両資材委
【 東京 】東旅協・富田会長が立候補届け
【 東京 】都内減車4月前半は31両
【 横浜 】工事中含め5万9700局/3月末のデジタル無線導入状況
【 東京 】東旅協・無線委不況対策提示
【 東京 】業界初「環境」に続き「品質向上」も/日立自交G ISO認証取得
   
2009年4月17日 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】 取り扱いをNC国交相等に一任/運賃競争を想定しない法体系に/民主党 タクシー関連2法案
【 東京 】「協議会」非協力には監査等で対応/国交省・奥田旅客課長
【 東京 】全国ベースで安マネ「認証」体制/NASVA今秋目標に取り組み
【 東京 】党内手続き急ぎ、早急に国会提出を/民主党法案巡りハイタクフォーラム
【 東京 】東京高裁も控訴棄却/自交東京国賠訴訟・判決
【 東京 】大型仕切り板を推奨/警察庁タク防犯基準改正
【 東京 】個タク独自の事故半減策を/都個協・理事会で木村会長
【 東京 】無線配車の協同化など/東旅協・無線委事業計画案
【 東京 】「足切り見直し」依然平行線/日交労「ストも視野」
【 東京 】足切り見直し等の交渉難航/全自交東京 加盟単組の春闘状況
 
Faxpress 関西版
姫路・東播地区の新運賃公示
  5月8日実施へ 距離短縮、中型1.3キロ630円
【大阪】近畿運輸局は17日、姫路・東西播地区のタクシー新運賃を公示した。上限運賃は、中型初乗り1.3キロ630円(現行1.5キロ同運賃)、小型初乗り1.3キロ610円(現行1.5キロ同運賃)。加算運賃は中型250メートルごと80円(現行270メートルごと)、小型300メートルごと80円(現行326メートルごと)という、同じ兵庫県下の神戸・阪神間地区で採用した距離短縮型の運賃改定。増収率は8.23%。認可予定日は5月1日、実施予定日は5月8日。
 昨年7月30日から10月30日にかけて、当該地区の全法人車両数の74%に当たる75社1276両が増収率6.7〜28.7%(平均15.3%)の運賃改定申請を行っていた。

〜500円、5・5遠割と格差拡大
 同地域では、はくろグループの500円タクシーがあり、姫路から東加古川へ拡大を進めている。また、同グループの上限運賃の会社は5000円超5割引の遠距離割引も申請中で、初乗り距離短縮による運賃値上げ組との価格差がさらに拡大することになり、競争激化が必至だ。
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2009年4月18日 関西版 ニュースヘッドライン
【 東京 】「協議会」非協力には監査等で対応/国交省・奥田旅客課長
【 大阪 】大阪相互タクのクーポン割引認可
【 京都 】都タクが定額給付金割引を申請
【 東京 】東京高裁も控訴棄却/自交東京国賠訴訟・判決
【 大阪 】タクシーに新たなライバル/「カーシェアリング」の動向
【 大阪 】「タクシー文化のレベル上げる」/全国子育てタク協会・筒井理事
【 大阪 】「もみじマーク」の罰則撤回へ
【 東京 】大型仕切り板を推奨/警察庁 タク防犯基準改正
【 大阪 】大タ協 加盟各社の防犯対策進む
【 神戸 】禁煙乗り場での車外喫煙など/兵サセン・指導委で報告
【 京都 】京個協が『京都ちょうちん新聞』 
【 大阪 】無事故等表彰の規定改革/国際興業大阪 意識向上図る
【 京都 】帝産京都自動車労組が春闘妥結
【 京都 】洛東グループ労組が分裂/津村氏らは新労結成
【 大阪 】相互タクが東大阪営業所廃止
【 大阪 】大阪阪神タク 社長交代を届出
 
2009年4月17日 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】控訴棄却 ワンコイン側は上告へ/「通勤利用」高裁も違法の判断
【 大阪 】「休止」の新進交通 池田タクが買収
【 大阪 】「同一運賃」へ事業者が提訴を/全自交大阪・森田委員長
【 大阪 】大阪山陽タクで社長交代/再建検討チームの今栄氏が新社長に
【 大阪 】累進歩合のどこが問題?/金子・労務委員長 賃金懇で報告
【 大阪 】全自交・朝日自動車労組が解散
【 大阪 】国際興業大阪 子育てタク出発式
【 訃報 】土肥 淳氏
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