長兄が音頭を取って
　今月８日、全日本トラック協会から、翌９日に坂本克己会長が記者会見を行うとの連絡が入ってきた。ずいぶん急な話だ。しかも会見のテーマには一切触れられていない。「通例」ではないことは、何となく分かる。９日、新宿・四谷の全日本トラック総合会館に赴いた。
　坂本会長はこの後、齋藤鉄夫国交相を訪ね、軽油高騰にかかる要望書を提出する予定であることを明らかにし、「来月12月２日の定例理事会の後、原油高騰、燃料高騰に対する全日本トラック協会の総決起大会を大々的に開催する。どのような人を呼び、どういう形でやるかは今後のコロナ感染状況を見極めながら決めたい」とするとともに、「弟分である全タク連、日バス協と三位一体で開催する。２人の弟分を従えて、長兄の全ト協が音頭を取って開催することになる」とぶち上げた。

トリガー条項凍結解除を要望
　坂本氏は、総決起大会開催によって訴えかける相手は一般社会であり、その中には荷主や国会議員も含まれるとした後、「柱」となる要望について語った。一つは特別臨時「トリガー条項」の制定（＝「トリガー条項」の凍結解除）だ。
軽油引取税の本則税率は１リットル15円だが、現在、期間を設けて上乗せされ同32.１円となっている。燃料費高騰が一定期間続けばトリガー条項が適用され、本則税率を上回る部分の課税（１リットル17.1円）が停止されることになっているが、東日本大震災復興のための財源の必要性から、トリガー条項は凍結されたままだという。
　仮に、トリガー条項が発動されれば、軽油の小売価格はリッター当たり17.1円と大幅に値下がりすることになり、産業界―ひいては国民生活に少なくないインパクトをもたらすことになると思われる。このため12月２日に開催する総決起大会では、「特別臨時トリガー条項の制定は単に業界対策ではなく、『地方経済活性化』そして『コロナ対応』でもある」とし、今回の行動を可能なかぎり広げるために、次の各団体にとも連携を図りたいとした。
�@石油商業組合と石油連盟�A商工会議所・商工会�B自動車工業会・自動車販売店連合�C連合および関係労働組合―だ。
　坂本氏は、凍結解除はコロナ対策の財源確保の必要性などから難しい面もあるとしつつも、「そうは言ってもわれわれはエッセンシャルワーカーだ。倒産寸前あるいはつぶれてしまったトラック会社が出始めている。『しゃーない』とばかり言ってはいられない」と語気を強めた。
　もう一つの柱は、適正な運賃・料金収受に至っていないとして、燃料サーチャージに対する荷主関係団体、企業の理解を醸成させ、適用するよう要請するもの―だ。「２日は（各団体が）こぞって同一の土俵にあがって総決起大会を開きたい」と強調した。

「要望は承った。しっかり検討したい」
　記者会見終了後、坂本会長および各地区の副会長らは千代田区の国交省に赴き、齋藤鉄夫国交相と面会、「軽油価格高騰に関するトラック運送業界からの要望書」を手渡した。
斎藤大臣は「燃料費の高騰により、社会の動脈としてエッセンシャルな機能を担う皆さんがたいへんな危機にあるとの認識は共有している。本来なら、荷主に転嫁するのが基本だが、それができないことにどう対処していくか考えたい。本日、要望は承った。しっかり検討したい」と応じた。この時、赤羽一嘉・前国交相も同席し、並んで写真に納まった。
　トラック業界からはこのように決起の声があがったが、タクシー業界はどうか。
ＬＰガス価については触れるまでもないが、トラック業界の軽油のように「トリガー条項」もないし、「燃料サーチャージ」を運賃に上乗せすることも現状ではあり得そうにない。すでに要望の口火を切った「１両当たり10万円給付」をより強く求めていくことや、運賃改定への機運を、危機感を持って高めていくぐらいしかないようにも思える。また一方で、タクシーのように時間をかけて新運賃を査定し、決定するやり方は元来、即応が必要な今回のような燃料高騰には対応困難とも思わされる。
　だが、コロナ禍後の燃料高騰はボディーブローのようにジワジワではなく、フィニッシュブローの一撃にさえなってしまうかもしれない。坂本会長ではないが、「しゃーない」では済まないのだ。　（了）
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