【 東京 】今月23日に開幕する東京オリンピックだが、パラリンピックともどもオリパラ関連輸送の位置付けが、コロナ禍前の「お荷物」から、コロナ禍後の「収益源」へと変わってきたようだ。５日の国際自動車決算報告会で同社役員から位置付けの変化に触れる発言があり、本紙が都内無線協組加盟の中小事業者に話を聞いた限りでは、こうした見方に同意しており、派遣するドライバーの数により影響度に差はあるもの、今夏の開催は東京業界で輸送協力する事業者にとってプラスになるようだ。
　そもそもコロナ禍が発生せず、予定通り20年夏にオリパラ大会が開催され、組織委等の要請に応じて多数の乗務員を派遣していた場合、オリパラがなければ通常営業（流し＋無線）で得られたはずの平年並みの営業収入が確保できず、組織委との契約に基づく少々安めの契約単価での収入（契約単価×人数×日数など）しか見込めず、事業者の本音としては「国策行事だから要請を受けてやむなく協力する」という姿勢に終始していたものとみられる。文字通り、オリパラ開催は「減収要因」だったわけだ。ところが20年初頭からコロナ禍が広がり、同年３〜４月から見る間に営業収入は急落、雇用調整助成金の特例なども活用しながら実働率も低迷する状況が現在まで続いている。これにより、オリパラがなければ期待できた営業収入の水準も見る間に急落。ベースとして見込める営業収入がどん底またはそれに近いレベルにしか達しない状況では、組織委と契約して見込める営業収入は、通常通り乗務員を市場に送り出すより高くなった、つまり「収益源」に転換したというのが現状のようだ。
　大手事業者のようにオリパラ大会に数百人以上の大規模で乗務員を派遣していれば、当該年度の決算見込みが変わるほどの収益になり得るとみられる。また、中小事業者の場合でも、数人から10数人レベルであっても少なくとも派遣した乗務員の範囲では通常営業させるより、オリパラ派遣の方が事業収支には貢献できるだろうとみられている。
　特に、東京都では７月12日から８月22日まで緊急事態宣言が発令されることになっており、オリンピック期間中のすべてがカバーされ、さらに宣言期間中は飲食店での酒類提供自粛が要請されることで、再び夜間のタクシーの営業収入が厳しさを増すことも予想されることから、一段とこの傾向は強まるとみられている。
〔7月10日号関東版掲載〕　 <Topへもどる>