観光庁によるとＧｏＴｏトラベル事業の基本概念図は（別掲１、２＝略）の通りで、国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の２分の１相当額を支援するというもので、支援額のうちの７割は旅行代金の割引に、３割は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与される。支援額の上限は１泊当たり２万円（日帰りの場合は１万円）とされている。

旅行代金はパッケージ化が条件
　いわゆる旅行代金に対する補助として、支援を受け取るためには旅行商品としてパッケージ化されている必要があり、タクシー事業者が登録事業者となってＧｏＴｏトラベル事業の恩恵を得るためには、自らパッケージ商品を開発するか、すでにパッケージ商品を持っているか、あるいは宿泊施設や旅行社等と連携してパッケージ商品に組み込んでもらう必要がありそうだ。
　新型コロナウイルス感染症拡大などのここ数カ月の現象とは関係なく、もともと観光タクシー事業に注力し、旅行商品化が済んでいるか、何らかの観光タクシーコース設定などを済ませ、売り出しているかなどの実績のある事業者には有利に働くが、それ以外の事業者がいまから準備して、スタートというのは少々ハードルが高そうだ。

「地域共通クーポン」に期待
　そういう意味で一般のタクシー事業者にとって、もう少し取り組みやすく、恩恵も受けやすいものがＧｏＴｏトラベル事業の中でも「地域共通クーポン」ということになりそうだ。
　地域共通クーポンの事業目的には「観光需要喚起による地域経済の回復」が掲げられており、「観光産業は、旅行業や宿泊業のみならず、貸切バス、ハイヤー・タクシー、レンタカー、フェリー、飲食業、物品販売業など、裾野が非常に広く、地方経済を支える重要な産業であるが、新型コロナウイルス感染症発生直後より、大変深刻な影響を受けている」とした上で、「多種多様な旅行・宿泊施設の割引と、旅行先の土産物店、飲食店、観光施設、交通機関等で幅広く利用できる地域共通クーポンの発行により、感染拡大により失われた観光客の流れを地域に取り戻し、観光地全体の消費を促すことで、地域における経済の好循環を創出する」としている。

安全で安心な新しい旅のスタイル
　もっとも、事業目的は地域経済の回復のみにとどまらず、「安全で安心な新しい旅のスタイルの普及・定着」も掲げており、十分な感染予防を施すことで相当程度、移動への懸念を払しょくし、従前の暮らしに近づくことをも目指すものと言えそうだ。
８日付観光庁発表によると地域共通クーポンの概要は別掲３（略）の通りである。ＧｏＴｏトラベル事業の概念図と基本的には同じだが、旅行代金全体の半分が補助対象で、さらにそのうちの３割が地域共通クーポンに割り振られることから、地域共通クーポン分は旅行代金全体の15％相当という表現になっているが、別に補助額が減らされたわけではない。
　発行形態には紙クーポン（1000円券のみ）と電子クーポン（1000円、2000円、5000円券がある）があり、有効期間は宿泊旅行では宿泊日及びその翌日、日帰りの場合は旅行当日のみとされている（別掲４＝略）。利用可能エリアは、宿泊地（日帰りの場合は主たる目的地）の属する都道府県及び隣接する都道府県（別掲５＝略）。
　実際にタクシーで利用される場面を想定してみると、旅行者がＧｏＴｏトラベル事業の対象となる旅行商品を購入し、予定通りに旅行に行った際に所定の地域共通クーポンを交付される。そのクーポンの使用先として別に旅行商品パッケージに組み込まれていなくても、当該旅行者が思いつきでどこかの施設やレストランに入った際の代金やそれら施設・駅などへ向かう際にタクシーに乗ればその代金の支払いに使うことができるとされている。

タクシーが一番大きな額を占める？
　今月11日の定例会見で赤羽一嘉国交相は「タクシー事業のバックアップについては、10月１日からＧｏＴｏトラベル事業で始める地域共通クーポンで、おそらく一番大きい額を占めるのは、観光地におけるタクシーなのではないかと思っている」と述べている。
　会見ではそうなる理由までは説明されていないが、おそらくクーポンとして交付される金額や旅行当日または翌日までに使ってしまう必要があることなど―クーポンそのものの性格とタクシー利用が比較的よくマッチしていることから、そうなるのではとの期待が表明されたものと推測する。
　まあ、そんなにうまく行くかどうかは分からないが、新たに旅行商品を開発してパッケージ化される必要がなく、ただ登録事業者になっておくだけで、事業としては従前通りのことをするだけで良いのなら、効果のほどがどの程度であれ、参加しておいて損はないと考えられる。登録手続きについてよく調べておいて、実行し、あとは事業開始とその成果を待つばかりということで良いのではないかと思う。（了）
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