【 東京 】政府のシェアリングエコノミー検討会議（主査＝安念潤司・中央大学大学院法務研究科教授）は７日、12回目の会合を開き、ヤフー、クラウドワークスなど民間事業者および事業者団体からのヒアリングを実施した。雇用によらない働き方が拡大することに合わせて社会的な諸制度の見直しなどについて意見交換した。ウーバーを典型例とする請負型の働き方を否定し、労働者性を認める司法判断が相次いだことに対しては出席した民間事業者側から社会保障に対する文化が異なっているとして、今後の改善に向けては国が主導するのか民間に任せるのか議論の余地があるとの意見があった。今回が年内は最後の会議となり、年明けから論点整理に向けた議論に入る。
　ヒアリングの中でフリーランス協会は、フルタイムフリーランスの年収は300〜500万円のゾーンが最多で会社員の平均と大きく変わらないとして、低収入のイメージは誤りだと強調したほか、フリーランスの社会保障等の充実でさらなる働き方の多様化を進めるべきだと主張した。ヤフーからは自社で保有するビッグデータを活用して個人への与信を高め、さらなる働き方の多様化を進めることができるとアピールがあった。クラウドワークスからはシェアリングエコノミーの進展に合わせて個人のスキルをシェアするサービスはさらに広がるとの見通しが示されたほか、ＩＴを活用した在宅勤務が可能になることで東京以外でも働けるという地方創生への寄与や高齢者の活用も強調した。損保ジャパン日本興亜からは、安全・安心なシェアリングエコノミーに向けプラットフォーム事業者やサービス提供者などに適切な保険を提供することで利用者の不安を払しょくすることに貢献できるなどと説明があった。
　意見交換の中では委員の中からクラウドワーカーについて、従来の会社員などでは労働法制による手厚い保護があったが、民間事業者側としてどのように考えるのか、海外ではウーバーのドライバーに労働者性を認める司法判断があったがどのように見ているのかと質す声があった。
　クラウドワークスからは米国と比較して議論するには社会保障制度の違いが大きいとした上で「米国では社会保障を国が提供せず、正社員であっても自分で選択し民間の保険に入らなければならない。ウーバーの例もあげられたが、正社員もクラウドワーカーも米国ではさして変わらない」と説明。さらに「日本では国が社会保障制度を提供しており、大学生が企業に就職すれば本人の気がつかないうちに社会保障制度が付いてくる。これまで護送船団的な社会保障をやってきた経緯があり、いきなり個人になった時、自分で考えて国民健康保険や国民年金に入る、民間の保険を選ぶという文化がそもそもない。インフラとしては個人のリテラシーの面からも不十分。正社員比率が全体の50％を割る状態になっており、残り50％が存在していることを前提とした社会インフラになっていない。国が主導して改善するのか、あるいは民間でやるのかというのは議論の余地がある」などの考えを示した。
〔12月８日号関東版掲載〕　 <Topへもどる>