巨人包囲網の構築〜リフトが主導
　ニューヨークタイムス紙などの報道によると12月３日、米国内におけるウーバー最大のライバル・リフト社は反ウーバー包囲網を構築すべく、ライドシェアリングプラットフォーム企業のグラブタクシー（シンガポール）、オラ（インド）、??快的（中国）と業務提携すると発表した。
　グラブタクシーはシンガポールに拠点を置き、タイ、マレーシアやインドネシアなど東南アジア諸国６カ国17都市で正規タクシーを含む配車マッチングサービスを展開し、日本のソフトバンク社がその将来性に期待し、約300億円を出資したことなどでも注目を集めた。インドのオラも同国内最大のタクシー配車プラットフォーム企業であり、ソフトバンクが約230億円出資しているという関係でもグラブタクシーに類似した立場にある。●●快的は中国国内の２大大手配車プラットフォーム企業が共倒れを防ぐために合併した同国内最大手だ。中国国内でウーバーとともにタクシー行政当局と摩擦を起こしつつ、互いに潰しあいの死闘を繰り広げている。
※「●●」
口偏（くちへん）に、テキ＝「滴」のつくり部（右部） を二文字続けた字

「ウバる」と言えば…
　ウーバーが企業価値７兆円以上と評価され、67か国300都市以上で営業し、「ウバる」と言えばスマホアプリでクルマを呼ぶこと―と定着しつつある時代にあって、ライバルたちは地域的には大きなシェアを持っているものの、グローバルな競争力は十分ではなかった。
　相互の提携が完成することで、例えばリフトのユーザーは中国国内で、リフトのアプリを使って●●快的の契約車両を呼ぶことができるようになる。また、例えばインドやシンガポールでもリフトのアプリを使ってそれぞれの提携先のクルマを呼ぶことができるようになるし、その逆方向も同様となるという。限られた資本と既存のプラットフォームを有効利用するという点で効率的で、かつ野心的な試みだが、それが奏効するか否か明らかになるにはもう少し時間が必要だろう。
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口偏（くちへん）に、テキ＝「滴」のつくり部（右部） を二文字続けた字

ウーバードライバーの反乱〜フランスの動き
　フランス国内での白タク配車マッチングサービス「ウーバーポップ」をめぐっては、その合法性に関する司法の場での争いに加え、フランス国内各地で正規タクシードライバーによる暴動まがいの抗議行動が記憶に新しいところだ。ウーバー側はそれとの関係は直接にないものの、白タクドライバーから徴収する手数料を大幅に引き上げており、これによってドライバー側の実質的な賃率が引き下げられたことで小規模なドライバーによる抗議行動が散発的に見られるようになったようだ。
　これら小規模な抗議行動にとどまらず、ウーバードライバー自身が自らを組織化し、ドライバーによるドライバーのためのアプリ立ち上げの動きが表面化してきた。「ＶＴＣ　Ｃａｂ」と名付けられた同アプリはすでに、グーグルプレイやｉＴｕｎｅｓ上で展開を開始しているという。ＶＴＣ　Ｃａｂは非営利法人という体裁を採り、会員ドライバーからは手数料を徴収せず、個定額の会費（月額250ユーロ＝約3万2500円）を支払ってもらい、それを原資にアプリ運営の費用に充てる仕組みになっている。
　実際の白タクドライバーたちの反応はＶＴＣ　Ｃａｂに好意的なものがほとんどだが、一方でウーバーがすっかりフランス国内に浸透し、定着してしまった事実からも、ウーバーの登録ドライバーでありつつ、ＶＴＣ　Ｃａｂにも登録するという二重登録ドライバーとしてしばらく様子を見る姿勢のものも少なくないようだ。
これは例えば、日本国内でも地方へ行けば昼間はタクシードライバーとして働きながら、夜間は運転代行業の代行ドライバー等との二重生活をする者が少なからずみられるのとあまり変わりないのかもしれない（安全上好ましくないことはもちろんのこととしてだが）。

ドライバーは請負業者か労働者か
　こうしたウーバー包囲網にとどまらず、リフト等も含めた白タク配車マッチングサービスの根底を揺さぶる問題として、白タクドライバーは「請負業者」か「労働者」か―という問題がある。新経連の政府への道運法改正による白タク合法化要望の提案書でも、改めて「運送契約は個々のドライバーと利用者の間で締結されるものであり、最終的な責任はドライバーが負う」と明記されている。
　上記のＶＴＣ　Ｃａｂの代表者もインタビューに答えて語っているが、「彼らは技術屋集団であって、人をコンピューターや計算機上の数字のように扱う。決して運送事業者という自覚を持っていない」と。事故時の保証責任を免れるだけではなく、日常の運行管理・整備管理費用すべてを負担することなく、最終的な責任をドライバーに負わせることで低価格サービスの提供を可能とし、かつ、自らも大きな利益を上げることができるというビジネスモデルが白タク配車サービスである。
　すでにカリフォリニア州労働委員会はウーバードライバーは労働者だと認定しており、司法の場での決着を待つため舞台は移された。本格的な審理が始まることになっており、その結果は彼らのビジネスモデルの根幹にかかわるものであると同時に、日本国内での論争にも少なからず影響を及ぼすものとみられており、引き続きその動向をチェックしていく必要があるだろう。（了）
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