共同会見には坂本会長のほか、川野繁・会長代行、岡�ｱ邦春・専務理事が同席し、記者からの質問に答えた。坂本会長は今総会の重点課題として「デジタル化完全移行への追い込み」「タクシー無線による社会貢献の実践」、そして「タクシー無線の高度化に関する調査研究」を掲げた。
　このうち、デジタル化完全移行の追い込みと社会貢献の実践については「昨年実現した低利融資のＩＴ活用促進資金、高年齢者雇用安定助成基金などを積極的に活用していただき、最後の追い込みを図りたい。この制度は日本政策金融公庫など政府系金融機関を通じてタクシー無線のデジタル化の促進を対象に助成・支援する。政府がタクシー事業者、しかも無線のデジタル化のためだけに低利融資をしてくれるなど常識的にあり得ないが、それが実現した。これはタクシー無線がいかに社会貢献しているかの証だ」とし、「大震災などの災害が起き、携帯電話などの通信手段が途絶した場合、最後に頼れるのはタクシー無線しかない。そうした役割を十分に理解してもらったものだと思う。トラックやバスも同じ公共輸送産業だが、タクシーは公共的、社会的、福祉向上に寄与している。需要ニーズにタクシー無線がきちんと対応してきた結果だと捉えている」と述べた。

自家無線も、ＩＰ無線も同じ仲間
　また、坂本氏は「タクシー業界では活性化の動きが盛んだが、タクシー事業の活性化はタクシー無線なくしてはあり得ない」と強調した。「言葉では簡単に活性化というが、これは非常に重い話でもある。活性化とはひと口に言えば事業の効率化をどうするか、要するに儲けるために何をするのかということだろう。決して社会貢献にはつながらないが、タクシー無線はそうではない」と指摘。「自家無線だろうが、ＩＰ無線であろうが、無線は一緒であり、同じ無線を利用する仲間として、同じ考えのもとに（全自無連は）組織がひと塊りになって社会貢献に一丸となって取り組んでいきたい」とし、「無線技術は日々進展しているが、われわれはそれをいち早く理解し、常にアタックする姿勢を持つ。営業、業務の効率化、そして社会的要請に応えるため、メーカーとともに取り組んでいきたい」と述べた。
　また、来年５月末日のデジタル化期限に間に合わない状況が生じる場合について岡�ｱ・専務理事は「昨年度のデジタル化申請では助成金活用などの準備に相当の時間がかかる状況が見られた。このため、総会後に総務省に対してデジタル化移行を申請する意思はあるものの、準備書類が間に合わないといったケースにも迅速に対応してもらうよう要望する考えで、すでに打診済みだ。国策であるデジタル化を推進するのだから、柔軟に考慮してもらえるものだと思う」と期待感を示した。
　さらに、デジタル化期限の延長については「会員からもそうした声が上がっていることは承知しているが、いまは来年５月末日の期限に向けて会員の努力を促すことしか考えていない。ただ、期限までに工事などが間に合わないケースはあり得るし、例えば今年度末に実施するといっても来年６月以降になってしまう場合は想定できる。そうした場合の救済措置は検討しなければならないだろう」とし、デジタル化が確定している事業者限定となるが、期限後の対応についても考慮するとの姿勢を示した。

14年度のデジタル化は24％増
　さて、そのデジタル化の進展状況だが、14年度中にデジタル化した、そのほとんどが低利融資制度などの支援制度を活用していることが分かった。全自無連によると、ＩＰ無線を含め、14年度のデジタル化導入事業者は全国で600社・移動局２万局超で、完全移行に向けた駆け込み現象が起きているという。
　今年３月末現在の全国のデジタルタクシー無線の導入事業者はデジタルＭＣＡ無線利用を含め2654事業者・移動局12万3406局となった。内訳はデジタルタクシー無線が2434社・11万8240局、デジタルＭＣＡ無線が220社・5166局。デジタル無線導入事業者のうち、４値ＦＳＫは842免許人、１万2951局で、デジタル免許人数の35％、移動局の11％を占めている。この１年間で474事業者・１万5797局増え、導入伸び率は過去最高の24％増となった。
　なお、４月１カ月間で57社・1530局のデジタル化が行われ、全体の約２割がＩＰ無線に移行している。従って残るアナログ事業者数は免許人比で約2000社、会員比では約1500社となることから、５月現在で残るアナログ事業者は約1600社と推察される。

低利融資利用は117件
　デジタル化投資を図るタクシー事業者を対象とした低利融資制度「ＩＴ活用促進資金」は４月10日現在、貸付期間７年以内のケースで国民生活事業（個人・小規模事業向け）1.35％以下、中小企業事業0.5％と優遇され、14年度１年間の融資実績は全国で117件、貸付総額10億8783万円となっている。これはデジタル化移行した事業者474社の25％に当たる。４月末現在では121社・11億1583万円が融資されている。今年度も継続、この割合はさらに高まることは確実な情勢だ。
　一方、高齢・障害・求職者雇用支援機構による「高年齢者雇用安定助成金」の活用実績は３月末現在で整備計画認定412件、助成金支給済み総額２億1625万円（63社分）、13年度分の47社、助成金支給額1000万円（２社分）を加えると、459社（支給済み総額２億2625万円）となった。こちらは14年度中のデジタル化移行事業者のうち87％が活用している。

ＩＰ無線組織委で支援事業具体化へ
　全自無連は昨年総会で発足を決めた「全国ＩＰ組織委員会」をこれまで３回開催し、無線配車について無線配車業務の効率化、組織対応の両面から検討を進めてきた。
４月現在、ＩＰ無線利用は全国で447社・2万886局が利用。全自無連は引き続き、低廉でより安定的・効率的な無線配車サービスを図るため、通信回線の料金低廉化策として大口一括契約方法や、通信回線以外の低廉化策などについて検討を進める考え。全自無連会員としての会費負担の基本的な考え方についても検討した。（了）
<Topへもどる>