【 大阪 】大阪市生野区の第３回「地域公共交通検討会」が27日、同区役所内で開かれ、大阪市からの公募に同区を対象に大阪メトロ（旧大阪市交通局）から提案のあった「ＡＩオンデマンド交通」について事業者（大阪シティバス）からの説明と地元住民などとの意見交換が行われた。
　定員50人が事前申込で満席となり、関心の高さがうかがわれた。過去２回の検討会で議論してきた「定時運行の赤バスの延長のようなものから全然違うものになっている」「このようなものがなぜ公募期間１カ月の中で出てきたのか」といった住民の声に対し、事業者側は「以前からＭａａＳやスマートシティ構想について検討をしていた」と説明した。
　当日参加した大タ協の坂本篤紀・広報サービス委員長が、「車いすの利用者を想定したバリアフリー対応ができていない」ことを問題視すると、「そこはタクシーに対応していただく。他のモードと手を携えて」などと回答した。
　坂本氏は、「規模の大きな大阪メトロがバリアフリー対応せずして、なぜ小規模のタクシー事業者にバリアフリー対応を求めるのか。以前から検討していた割にバリアフリーのことを考えないのはいかがなものか。地元の南タクシーもさまざまな提案をしていたし、ワンボックスカー・ハイエースを保有したタクシー事業者も多数あるが、この車両では車いす対応ができない。タクシーはコロナ禍の中で密を避ける意味で乗合は提案していない。もともと毎日１億円儲かっていた交通局を民営化したが、今こそ採算を度外視した事業をやるべきではないのではないか」と指摘。
　「１日数百人の利用を予想している」との反論には、「それだけの利用者を詰め込むには、ほぼ満員での運行が必要となるが、コロナ禍で満員運行は利用者としても抵抗があると思う。今やるべきことではない。また、高齢者にキャッシュレス決済を利用してもらいたいとの構想だが、そのシステム導入が一体いくらかかると思っているのか。それでは１年で元は取れない。市としても公募を１カ月で終わるようなことをせず、もっと公平に提案参加ができるようにして良いアイデアを出してもらうべきだ」と問題点をあげて追及した。
　坂本氏は、「維新系の区長はこの提案で推し進めるべく、住民の意見を聞いたというパフォーマンスの色合いが濃い」との印象を語り、12月に開催予定の大阪市の地域交通会議ではさらにしっかりと意見を述べていきたいと話した。
　全自交関西地連の加藤直人委員長も参加し、「地域公共交通は採算の取れるものではない。自治体の助成金が入ってしかるべきもの」と発言した。同氏は「300メートル間隔の停留所に対し高齢者が歩けるのは100メートルが限度という声もあり、地元住民の方々もこのような大阪メトロ側の論理のＡＩオンデマンド交通提案を否定的に受け止めている印象を受けた」と感想を述べた。
〔11月28日号関西版掲載〕　<Topへもどる>